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日外会誌. 85(11): 1479-1489, 1984


原著

免疫療法施行時における所属リンパ節の抗腫揚性に関する実験的研究

東京女子医科大学 第2病院外科(指導:榊原 宣教授)

川田 裕一

(昭和59年5月1日受付)

I.内容要旨
腹水肝癌MH134担癌C3H/Heマウスに溶連菌製剤OK-432を投与して悪性腫瘍に対する免疫療法のモデルとし,免疫療法施行時における所属リンパ節の存在意義,そこにみられる免疫反応や抗腫瘍性の変化などについて実験的に検討した.所属リンパ節を温存した担癌マウスでは,所属リンパ節を欠如した担癌マウスよりもOK-432の抗腫瘍効果が大きかつた.すなわち,免疫療法の抗腫瘍効果発現に所属リンパ節の存在が重要なことが明らかとなった.所属リンパ節重量をみると,転移のない腫瘍移植後比較的早期にはOK-432を投与されたものが生理食塩水を投与されたものより重く,転移の形成される中期以降には逆の関係となった.これは,OK-432投与により早期には免疫反応が亢進し,中期以降には転移が抑制されることによると考えられた.所属リンパ節リンパ球のThyl• 2抗原陽性細胞比およびPHA幼若化反応を測定したところ,腫瘍の進行や転移の形成に伴いこれらの測定値は低下したが,OK-432により低下は小さくなった.OK-432投与による測定値の増加率でみると,所属リンパ節は非所属リンパ節よりもOK-432の影響を強くうけていることが明らかとなった.さらに,所属リンパ節リンパ球の細胞障害活性を,YAC-1細胞およびMH134細胞を標的細胞として測定したところ,同じような変化が認められた.すなわち,所属リンパ節はOK-432による免疫療法の効果発現の場であり,その抗腫瘍効果に促進的にはたらくことが示唆された.

キーワード
所属リンパ節抗腫瘍性, 免疫療法

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