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日外会誌. 85(11): 1464-1471, 1984


原著

閉塞性黄疸時における急性潰瘍についての実験的研究
-とくに胃粘膜エネルギー代謝の面から-

東北大学 第1外科教室(主任:佐藤寿雄教授)

乾 秀 , 亀山 仁一 , 佐々木 巌 , 成井 英夫

(昭和59年1月6日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時における急性潰瘍の発生機序について胃粘膜エネルギー代謝の面から検討した.さらに,迷走神経切離術の効果および胃体部と幽門部における胃粘膜エネルギー代謝の差について実験的に検討を加えた.
対象と方法:体重250g前後のラット312匹を用い対照群,迷切群,黄疸群,黄疸兼迷切群の4群を作成した.その後水浸拘束を負荷し潰瘍係教,胃粘膜エネルギー代謝を経時的に検討し以下の成績を得た.
1.対照群では水浸拘束後潰瘍係数は増加したが,胃粘膜エネルギー代謝は変化しなかった.
2.迷切群では潰瘍係数は対照群に比べ有意の低値を示し,胃粘膜エネルギー代謝は差はみられなかった.
3.黄疸群では潰瘍係数は有意に増加し,胃粘膜エネルギー代謝も早期より有意に低下した.
4.黄疸兼迷切群では潰瘍係数は黄疸群に比べ有意に低値を示し,胃粘膜エネルギー代謝の低下は有意に抑制された.
5.胃粘膜エネルギー代謝を部位別に検討したところ,とくに黄疸群および黄疸兼迷切群の胃体部での低下が著明であった.
以上から,閉塞性黄疸時に水浸拘束ストレスが負荷された場合,とくに胃体部の胃粘膜エネルギー代謝が早期に著明に低下することから急性潰瘍が発生し,迷切術の付加により予防されるものと思われた.

キーワード
急性潰瘍, 胃粘膜エネルギー代謝, 潰瘍係数

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