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日外会誌. 85(11): 1433-1439, 1984


原著

腹部大動脈以下の動脈硬化性疾患患者の男子性機能に関する血管外科的諸因子

川崎医科大学 胸部心臓血管外科

土光 荘六 , 藤原 巍 , 元広 勝美 , 稲田 洋 , 佐藤 方紀 , 木曽 昭光 , 野上 厚志 , 正木 久男 , 中井 正信 , 山根 尚慶 , 岩本 末治 , 奥坊 康士 , 森井 章司 , 勝村 達喜

(昭和58年12月16日受付)

I.内容要旨
腹部大動脈以下の動脈硬化による疾患患者(22名の腹部大動脈瘤AAA,58名の閉塞性動脈硬化症=ASOと4名の両者の合併症)の男子性機能に影響を与える因子として,年齢,閉塞または拡張病変の部位,陰茎と足首の動脈圧,拍動を触知する大腿動脈の数,Fontaine分類による阻血症状の程度などをとりあげて統計学的に検討した.
インポテンスの割合はAAAが最も少なく(52%),次いでASOで(66%)両者の合併症が最も多かった(100%).しかし男子性機能の有無により陰茎圧比(収縮期陰茎圧/同上腕動脈圧)を比較するとASOでは有意差があったがAAAでは有意差がなく,後者のインポテンスの原因には血流以外の因子の関与が推定された.
ASO患者で最も中枢側の動脈閉塞部位とインポテンスの関係をみると腹部大動脈閉塞群のインポテンスの割合が最も高率であり,総腸骨動脈閉塞群が続いて比較的高率で,外腸骨動脈以下の閉塞群よりは前2者のインポテンスの割合は有意に高率で陰茎圧比も有意に小であった.ASO患者を60歳以上と以下に分類すると60歳以上のインポテンスの割合は有意に高率で,陰茎圧比は有意に小であった.足首圧比と陰茎圧比の間にはr=0.49の有意な相関があつたが,足首圧比は陰茎圧比ほど正しいvasculogenic impotenceの指標にはならなかった.大腿動脈の拍動は無いが男子性機能を持つものでは動脈造影上両側外腸骨動脈などの閉塞があり,同動脈の拍動が無く男子性機能低下を来たしたものより陰茎圧比は有意に大であったが足首圧比には有意差はなかった.Fontaine分類II度とIII度を比較すると年齢,足首圧比と陰茎圧比には有意差があったが,インポテンスの割合には差がなかつた.
AAA患者を年齢別や総腸骨動脈への拡張病変の有無により分類して比較してもインポテンスの割合や陰茎圧比には有意差はなかった.

キーワード
vasculogenic impotence, penile systolic pressure index (PSPI), arteriosclerosis obliterans (ASO), abdominal aortic aneurysm (AAA), ankle systolic pressure index (ASPI)


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