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日外会誌. 85(11): 1393-1404, 1984


原著

乳癌および乳頭腫の発生部位と組織構築
-形態学的ならびに組織化学的研究-

東北大学 医学部第2外科(主任:葛西森夫教授)

大内 憲明

(昭和59年1月18日受付)

I.内容要旨
乳癌と乳頭腫の発生部位を明らかにするための基礎的研究として,腫瘍と乳管系を3次元形態学的に解析したのち,末梢乳管に発生した癌,乳頭腫を対象に組織構築の形態学的ならびに組織化学的検討を行った.後者は特に細胞の癌化に伴う組織構築の改変を解明することにより,癌と乳頭腫の組織学的診断基準の確立をめざしたものである.
まず,準連続切片による3次元復構から,乳頭腫には中心乳管から孤立性に発生する中心性乳頭腫と,末梢乳管から多発性,まれに孤立性に発生する末梢性乳頭腫の2型が区別された.末梢性乳頭腫は37.5%の高率に癌を共存し,その中に乳頭腫と連続する癌ならびに“cancerin papilloma"を認めたことから前癌病変と見なし得た.乳頭腫に共存した微小癌を対象として乳管癌の発生部位を検討した結果,癌は末梢乳管上皮より発生することが示された.したがつて,末梢乳管は癌および前癌病変の発生部位として重要であると考えられた.
次に,乳癌を細胞異型のみでなく,構造異型からも把えるべく,連続切片から腫瘍の胞巣と腺腔の3次元復構を行った.その結果,乳頭腫では腺腔は連続してネットワーク構造を形成したが,乳管内癌では非連続で空胞状に分離し,多孔質構造を形成した.これは組織像に見られる乳頭腫のcomplex glandular patternと,癌のcribriform patternを3次元的に明らかにしたものと言える.また,境界領域病変は一部に分離腺腔を認め,癌に近い病変と考えられた.
さらに,乳癌の構造異型を組織化学的に証明するためbiotinylated lectinとavidin-biotin peroxidase complex法を用いて,乳腺のlectin-binding patternを観察した.乳頭腫ではluminal borderとapical cytoplasmic surfaceがnetwork状に染色された.一方,乳管内癌ではさらに癌細胞のsupranuclear cytoplasm,intracytoplasmic luminaが特異的に染色され,luminal borderとともにcribriform状,rosette状のlectin-binding patternを呈した.後者は3次元像の多孔質構造に対応し,細胞の悪性化に伴う組織構築の改変が組織化学的に証明された.

キーワード
乳癌, 乳頭腫, 組織構築, lectin組織化学法

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