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日外会誌. 85(10): 1370-1375, 1984


原著

孤立性腸骨動脈瘤の臨床

1) 東京大学 医学部第2外科
2) 藤枝市立志太総合病院 外科

佐藤 紀1) , 多田 祐輔1) , 秋元 滋夫1) , 田中 潔1) , 上妻 達也1) , 高木 淳彦1) , 丸山 雄二1) , 和田 達雄1) , 甲田 安二郎2)

(昭和58年12月12日受付)

I.内容要旨
孤立性腸骨動脈瘤は比較的稀な疾患であり欧米の文献では腹部大動脈瘤に対する相対頻度として0.9~ 1%程度の値が報告されている.我々は29年間に16例20瘤の孤立性腸骨動脈瘤を経験した.内訳は総腸骨動脈に17瘤,内腸骨動脈に2瘤,外腸骨動脈に1瘤であり, 1例を除き男子例であった.同期間に扱われた腹部大動脈瘤は341例であり,孤立性腸骨動脈瘤のこれに対する相対頻度は4.7%となる.16例中6例(37.5%)が破裂例であり腹部大動脈瘤における破裂例(11.1%)に比べ有意に多い.また有意に男子に多いと言える.
16例中自宅で破裂死亡した1例を除き15例に手術が施行された.非破裂例は全例耐術したが破裂例5例中3例(60%)が死亡している.計測できたもののうち最小の破裂瘤は径3.5cmであった.
16例中5例が破裂による症状で来院し,また3例は瘤とは関係のない訴えにより来院している.即ち半数が瘤に対する自覚症状を欠いていた.
2例の総腸骨動脈瘤は総腸骨静脈内に破裂し動静脈瘻の形成を見た.1例に対しては救急手術を行ったが術前の脱水に起因すると思われる急性腎不全にて失い,他の1例には内科治療の後待期的手術を行って救命し得た.
孤立性腸骨動脈瘤の臨床例が少ないのは,発現しにくい事に加え破裂してはじめて診断される例が多い事にもよると考えられる.即ち臨床例における破裂頻度は実際よりは高い可能性があるが,破裂した場合の予後の悪さを考えると径3cm程度の瘤に対しても積極的に手術を行う方針としている.

キーワード
孤立性腸骨動脈瘤, 腸骨動静脈瘻

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