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日外会誌. 85(10): 1317-1331, 1984


原著

再生過程における肝の容積と機能の変化の相関に関する実験的, 臨床的研究

名古屋大学 医学部外科学第2講座(指導:近藤達平教授)

河合 庸仁

(昭和58年12月19日受付)

I.内容要旨
肝硬変における肝切除後の再生過程について,肝容積と肝機能の経時的計測により実験的および臨床的に比較検討を行なった.
実験的にdimethylnitrosamine (DMNA) で作成した肝硬変犬に70%肝切除を加え,CTによつて肝容積の変化を反復計測し,同時にICG負荷試験,hepaplastin test等によつて肝機能の変化を測定し,両者を対比したところ, DMNA肝硬変犬では肝病変の進行度と関連し,肝容積,肝機能の両者とも正常群に比べて回復が遅延した. しかし,耐術例では,肝切除直後に肝容積は減少しても有効肝血流量が維持され,ICG負荷試験で知られる機能効率は増加し,その後次第に容積が回復した.
臨床的には6症例について肝切除後のCTによる肝容積,ICG負荷試験,hepaplastin testを中心とする肝機能の変化を比較して再生過程を検討した.残存肝が正常な2例では肝切除術に肝容積,機能とも速やかに再生したが,肝線維症の2例では肝葉切除後に容積の再生は良好であったが,機能の回復は遅延し,肝変化に加えて年齢因子も再生阻害にはたらくことを示した.しかし,肝硬変の2例では肝葉または肝区域切除に耐えて,術後の肝機能の回復は遅延したが,肝容積の再生は良好であった.
肝硬変例で肝切除に耐えたものでは術直後の有効肝血流量が維持され,肝機能効率が高い特徴があり,これがその後の肝容積の回復に重要な役割を果たすことが示唆された.従って,さらに肝硬変の形態特徴を把握するとともに手術例では残存肝の血行維持によって容積および機能の回復を促すべきことが知られた.

キーワード
肝切除, 肝再生, computed tomography (CT), 肝容積測定, 肝硬変


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