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日外会誌. 85(8): 835-848, 1984


原著

実験的エンドトキシンショック時における腎の超微形態学的ならびに組織細胞化学的研究

日本医科大学 第1外科学教室(主任:代田明郎教授)

安東 俊明

(昭和58年11月2日受付)

I.内容要旨
Wistar系ラット腹腔にE. coli endotoxin (ET) を投与して,実験的にETショックを作製し,腎皮質の組織形態学的変化を主として超微形態学的に検索した.さらに標識物質として用いたHorseradish Peroxidaseの血管透過性および近位尿細管における再吸収の変化を観察するとともに,遠位尿細管におけるいわゆる能動輸送の変化をSodium-Potassium Adenosine Triphosphatase (Na+-K+ATPase)を指標として電顕組織細胞化学的に検索し,腎機能の変化について検討した.
ET投与後早期より,微小循環不全の形態学的表現と思われる小・細動脈の収縮,静脈の拡張および小・細動静脈,糸球体毛細血管のうつ滞像が観察された.その変化は経時的に増強し,ET投与後4時間目ではフィブリンおよび変性した血小板によるいわゆる糸球体血栓症像がみとめられた.また,糸球体変化に平行して上皮の浮腫状変化を主とする尿細管変性像がみとめられたが,遠位尿細管の形態変化は軽微にとどまつた.
Peroxidase標識法により,ET投与後早期より出現する血管透過性の著明な亢進が確認されたが,糸球体毛細血管では透過性の低下,つまり糸球体濾過機能の低下を示唆する所見が得られた.さらに,糸球体を濾過された標識物質の近位尿細管での再吸収は,ET投与後早期には亢進したがその後著明に低下し,またNa+-K+ATPase活性の局在よりみた遠位尿細管の能動輸送の変化も同様の傾向を示した.
以上の形態学的検索の結果より,ETショック初期では,ショックに対する生体反応の一環として腎尿細管再吸収能は一過性に亢進するが,微小循環不全の進展にともない,顕在化してくる糸球体濾過および尿細管再吸収をはじめとする腎機能の荒廃化が,本病態にみられる腎機能不全発生の背景をなすものと考えられた.

キーワード
Endotoxin shock, 腎, Ultrastructure, Horseradish peroxidase, Na+-K+ ATPase

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