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日外会誌. 85(8): 820-834, 1984


原著

膵癌切除例の臨床病理学的研究
-臨床病理学的にみた予後左右因子およびリンパ節転移の検討-

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

大山 廉平

(昭和58年11月16日受付)

I.内容要旨
昭和46年1月より昭和58年6月までの12年6カ月間に,慶応義塾大学医学部外科学教室において切除された膵癌63症例(頭部癌52例,体尾部癌11例)を対象として.膵癌取扱い規約に従い,臨床病理学的研究(予後左右因子,リンパ節転移および切除後剖検所見)を行い,以下の結果を得た.
膵頭部癌切除例について
(1) 予後は特に腫瘍の大きさ (T),分化度,浸潤増殖様式 (INF),リンパ管侵襲 (ly),静脈侵襲 (V),神経侵襲 (ne),膵被膜への癌侵襲 (s) および組織学的リンパ節転移 (n) の各因子と関連し,進展に伴い予後不良であった.
(2) リンパ節転移は,転移率75.0% (36/48) を示し,下膵頭後部,上膵頭後部,上膵頭前部,下膵頭前部およぶ上腸間膜動脈起始部に沿う各リンパ節の順に転移率が高かった.またn0症例でもリンパ節周囲に神経侵襲を来した特徴的な所見を示すことがあった.
(3) リンパ節転移率は,膵前方被膜への浸潤 (S),膵後面に接する組織への浸潤 (Rp),INF,ly,十二指腸壁への癌侵襲 (du),膵被膜への癌侵襲 (s) と関係し,侵襲高度群の転移率が有意に高かつた.
(4) 切除後剖検所見 (20剖検例) では,リンパ節転移14例,肝転移13例,腹膜播種10例,肝門部再発7例,残存膵および膵腸吻合部再発を各6例に認めた.
(5) 血管合併切除例において.腫瘍の門脈壁深達度による予後の差は認めなかった.
膵休尾部癌切除例について
(1) リンパ節転移率40% (4/10) を示し,転移形式は膵頭部癌と異なり,腫瘍周囲のリンパ節への直接浸潤によるものと考えられた.
(2) 嚢胞腺癌48カ月生存例を除き,死亡例は全て10カ月以内であった.

キーワード
膵癌の予後左右因子, 膵頭部癌, 膵体尾部癌, リンパ節転移, 切除後剖検所見

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