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日外会誌. 85(8): 778-790, 1984


原著

実験的Endotoxin shockにおける肝および脾の超微形態学的研究
-とくに少量ヘパリンの細網内皮系障害に対する治療効果の検討を中心に-

日本医科大学 第1外科(主任:代田明郎教授)

鳥羽 昌仁

(昭和58年10月27日受付)

I.内容要旨
少量のヘパリン (100IU/kg) が正常ラットの肝,脾を中心とする細網内皮系に及ぼす影響をcarbonを指標として形態学的に検索するとともに,Endotoxin (ET) をラット腹腔内に投与して実験的にショックを作製し,少量ヘパリン療法の有効性について,肝,脾の経時的,形態学的変化およびラット24時間死亡率とを検討し,次の成績を得た.
1. 正常ラットにおけるヘパリン処置群の肝Kupffer細胞および脾マクロファージでは,対照群に較べて光顕および電顕的に細胞の腫大,増生,細胞内小器官の発達,carbonの貪食増大などの諸変化をみとめた.
2. 対照無処置ET投与群の肝では,投与4時間後より多彩な変化が出現し,類洞壁内皮細胞は著しく変性,崩壊して剥離像も多数存在し, Kupffer細胞の変性,壊死が目だち,また,類洞内には微小血栓が形成され,しばしばこれらは集塊をなした.時間の経過とともに,前述の所見は一層著明となり,とくに高度のKupffer細胞の障害が続いた.依然として賦活され,細胞片やフィブリンなどを活発に貪食している像を頻繁にみとめた.また,類洞内に微小血栓はまったくみとめられず,類洞壁のliningは良く保たれた.一方,脾においても同様に,ヘパリン前処置群および早期後処置群では,マクロファージ,細網細胞の貪食能は活発に保たれ,組織学的な改善が明らかにみとめられた.
3. ET 7.6mg/kg (LD50) 投与による死亡率はヘパリン前処置群および早期後処置群では,24時間後の対照無処置群の50%に対して,死亡率10%と軽度減少した (p<0.1).一方,ET 30mg/kg (MLD) を投与すると,ヘパリン前処置群では,死亡率60%と対照無処置群に較べて有意の減少を示した (p<0.05).

キーワード
少量ヘパリン, Endotoxin shock, Reticuloendothelial system (RES), 超微形態学的研究


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