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日外会誌. 85(7): 686-693, 1984


原著

胃全摘後の血中,尿中group I pepsinogen (PG I)

秋田大学 第1外科

小玉 雅志 , 高橋 俊雄 , 木田 光一 , 山口 俊晴

(昭和58年9月7日受付)

I.内容要旨
胃全摘術を施行された患者にはgroup I pepsinogen (PG I) は認められないとされてきたが,我々は,radial diffusion assay法により,胃全摘後患者の約半数に尿中蛋白分解活性があることを見い出し,それがゲル沪過および寒天電気泳動法にてPG Iであることを確認した.さらに,抗原精製が可能となり,最近実用化された測定感度のより鋭敏なradioimmunoassay法を用い,胃全摘後患者40例の血中,尿中PG Iを測定し,次のような結果を得た.
1) 胃全摘後患者のほぼ全例の血中および尿中にPG Iが検出され,その濃度はそれぞれ4.17±0.51,32.2±3.83ng/mlで,健常人の1/18,1/28であった.
2) PG I濃度は年齢や性差とは無関係であった.
3) radial diffusion assay法による尿中蛋白分解活性,すなわちペプシノーゲン活性とradioimmunoassay法による尿中PG I値は相関した.
4) 個人内変動をみると,胃癌再発症例で血中,尿中PG Iの上昇が認められた.
5) 胃癌再発症例および非治癒切除例では治癒切除例よりも血中,尿中PG Iが高い傾向を示した.
胃全摘後にもなお認められるPG Iの由来に関しては,1) Meckel憩室をはじめとした消化管における異所性胃粘膜や,炎症の修復過程あるいは腸管吻合部位に発生する胃上皮化生の存在,2) Brunner腺に由来するPG IIの生成過程におけるPG Iへの変化,等が考えられる.また,胃全摘後の胃癌再発症例でPG Iが上昇するという結果を得たことは,胃癌細胞のPG I産生を示唆する現象とも解釈でき,胃全摘後胃癌再発診断とも関連して興味深い.今後さらに症例を重ね,胃癌とPG Iとの関係を検討したい.

キーワード
group I pepsinogen (PG I), 胃全摘術, 胃癌


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