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日外会誌. 85(7): 663-674, 1984


原著

迷走神経内のカテコールアミン含有線維に関する研究

大阪大学 医学部外科学第1講座(主任:川島康生教授)

坂口 寛正

(昭和58年9月9日受付)

I.内容要旨
迷走神経内のカテコールアミン (CA) 蛍光を有する線維 (CA含有線維) に含有されるCAの本体を明らかにする目的にて,ヒト横隔膜直下およびイヌ横隔膜直上部の迷走神経を採取し,神経内のドーパミン (DA),ノルエピネフリン (NE) およびエピネフリン (E) を定量した.次いで,本神経内のCA含有線維の起源を明らかにする目的にて,イヌの頚部迷走神経を隣接する交感神経節および交通枝とともに一括して採取し,神経内のCAを系統的に定量した.更に,本神経内のCAの生理動態を明らかにする目的にて,イヌの迷走神経を結紮し,神経内のCA含有量の変動を経時的に検討した.即ち,横隔膜直上部の迷走神経を1cmの間隔をおき2カ所結紮した後,両結紮間の神経を直ちに採取し,「対照部」とした.4時間後に,頭側結紮糸より中枢側の神経および尾側結紮糸より末梢側の神経を,それぞれ1cmの長さを採取し,各々を「中枢部」,「末梢部」とし,3者間のCA含有量を比較検討した.
その結果,(1) ヒトならびにイヌの迷走神経内にDAとNEが含有されることを確認した.Eは,検出されなかった.(2) 交感神経節の交通枝合流部より尾側に連なる迷走神経内のみならず,頭側に連なる迷走神経内にもDAとNEが検出されたことより,イヌ迷走神経内のDAおよびNEの一部は迷走神経本幹にも起源を有すると考えられた.(3) 迷走神経を4時間結紮した実験犬において,「対照部」に比し,「中枢部」のDAおよびNE含有量は有意に高値を示し,「末梢部」は有意に低値を示したことより,イヌ迷走神経内のDAおよびNEは,本神経内を中枢側より末梢側に向かい移動している可能性が示唆された.

キーワード
迷走神経, カテコールアミン含有線維

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