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日外会誌. 85(6): 592-597, 1984


原著

特発性食道穿孔に対する外科治療の経験
-とくに食道抜去および後縦隔経由食道胃吻合術による1治験例を中心にして-

*) 関西医科大学 胸部外科
**) 関西医科大学 外科

大迫 努*) , 辰巳 明利*) , 大本 一夫*) , 斎藤 幸人*) , 茂幾 俊武*) , 増田 與*) , 野々山 明*) , 香川 輝正*) , 中村 直樹**) , 日置 紘士郎**) , 山本 政勝**)

(昭和58年8月11日受付)

I.内容要旨
特発性食道穿孔はそれ程まれな疾患とはいいがたいが,食道再建の報告は比較的少ない.
著者らは3例の特発性食道穿孔に対し手術を行い,全例に治療目的を達し得た.症例1は56歳男で左側胸部痛を主訴として訪れた.すでに発症より3日を経過していたが,開胸下のドレナージを行い治癒した.術後8年目の現在全く異常を認めていない.症例2は55歳男で右側胸部痛と呼吸困難を主訴として訪れ,2カ月後に胃瘻造設,非開胸下食道抜去術を行ったが,その後の食道再建は不成功に終り,5年後に心不全で死亡した.症例3は60歳女で穿孔診断まで11日間を経過しており,直達手術は不可と考え16日目に頚部食道離断,胃腸瘻造設を,更に2カ月後に非開胸下食道抜去,後縦隔経由食道胃吻合術を行ったが術後経過は良好であった.
本症に対する治療は急性期では症例1のようにドレナージのみで治癒する場合もあるが,症例2,3のように慢性期例では治療に難渋する場合が多い.しかしながら特発性食道穿孔に対する本術式は,1)開胸操作を必要とせず手術侵襲の少いこと,2)疾患が下部食道に多く,用指剥離にて抜去が比較的容易になること,3)胃管による食道再建が,同時的同所的に行い得ることなどから安全かつ適切な術式と思われた.
本症に対する食道再建報告例は本邦では著者らの調べ得た限りでは症例3を含めて7例であったが,食道抜去術を行った例は本例以外には見い出し得なかつた.

キーワード
特発性食道穿孔, 食道再建, 非開胸食道抜去術

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