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書誌情報]
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日外会誌. 85(6): 513-520, 1984
原著
担癌マウスにおける輸血の腫瘍増殖促進効果の研究
I.内容要旨腎移植の分野では,輸血が移植腎の生着に非常に良好な効果をもたらすことは,最近の知見でよく知られている.この効果の正確なメカニズムは不明であるが,最近,何らかの免疫学的寛容を誘導している可能性を示唆する報告が散見される.そこで,著者は,輸血が免疫学的寛容を誘導しているならば,当然,腫瘍外科やその他の臨床的な分野での輸血は,危険なriskをはらんでいることになると考え,この事実を明らかにするために,マウスを使用して,移植腫瘍に対する輸血の効果を検索したので報告する.
使用したマウスは,C3H/He (H-2
k),C57BL/6 (H-2
b),AKR (H-2
k),および (C57BL/6X DBA/2) F
1 (BDF
1) (H-2
b,d) の3種類の近交系マウスおよび1種類の近交系交配第1代のマウスで,相互に異なる輸血の組み合せを作製し,輸血後2週間目に,C3H/Heマウス由来のMH134細胞 (H-2
k) 又はC57BL/6マウス由来のLewis肺癌細胞 (H-2
b) を100×10
4個を背部皮下に移植し,その腫瘍の増大を計測し,各々の輸血群の相互間の差異を検討した.更に各成分輸血として血漿,赤血球,脾臓より分離したT細胞とB細胞,更に未熟なT細胞として胸腺より分離した胸腺細胞をそれぞれ輸血し比較検討を行なった.尚,これらの実験の対照は,生理的食塩水静注群とした.
結果: H-2の同じ輸血群の腫瘍増殖は,対照群に比し,同じ腫瘍増殖傾向を示した. H-2の異なる輸血群は,程度の差はあれ,著明な腫瘍増殖傾向を示した.特にBDF
1近交系交配マウスの輸血群に強くその傾向が出現した.成分輸血の実験では,赤血球のみの輸血群は,対照群に比し腫瘍増殖傾向に差は認められなかったが,血漿,胸腺細胞,T細胞の輸血群では,強い腫瘍増殖の促進が認められた.
以上の結果より,輸血は主要組織適合性抗原に基づいて,免疫学的寛容を誘導している可能性が示唆された.
キーワード
輸血, 移植腫瘍, 主要組織適合性抗原, 腫瘍増殖
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