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日外会誌. 85(5): 468-481, 1984


原著

門脈圧亢進症,特に肝硬変症例における門脈副血行路形成が血中insulin変動に及ぼす影響に関する臨床的ならびに実験的研究

名古屋大学 医学部外科学第2講座(指導:近藤達平教授)

荒川 敏之

(昭和58年7月21日受付)

I.内容要旨
肝硬変症例に見られる末梢血中insulinの異常高値と門脈副血行路発達の関係を検討した.
肝硬変性門脈圧亢進症37例で末梢血と肝静脈血中のinsulinを比較し,C-peptideとの対比下にglucagon負荷の影響を検討し,肝循環状態の検査成績と対比し,限定された症例で門脈血中insulinを測定した結果,末梢血中insulinが異常高値を呈する主要原因として,門脈副血行路の発達があること,また同時に門脈血の肝内短絡を重視すべきことを認め,末梢血と肝静脈血中insulinは,門脈副血行路の発達した肝硬変群では正常関係が逆転し,臨床的に重要な判断の根拠となることを知った.
さらに実験的に端側門脈下大静脈吻合犬においてinsulinの変動を追求した結果,門脈副血行路によって膵臓血をおさめた門脈血が肝臓を迂回し,直接大静脈系に流入する異常血行を生じることが,末梢血中のinsulin上昇,insulinの末梢血中濃度と肝静脈血中濃度関係の逆転を生じる主要原因となることを認めた.

キーワード
末梢血中insulin濃度, 肝静脈血中insulin濃度, 肝硬変症, 門脈副血行路, 門脈圧亢進症

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