[書誌情報] [全文PDF] (4540KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(5): 457-467, 1984


原著

閉塞性黄疸時の肝実質障害に関する研究:ラット総胆管結紮による肝糖代謝律速酵素活性の変動について

岡山大学 医学部第1外科(主任:折田薫三教授)

黒瀬 通弘

(昭和58年8月2日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時の肝実質細胞障害の性質ならびに程度を明らかにするため, ラットの総胆管を結紮,離断して閉塞性黄疸を作成し,肝実質細胞障害の鋭敏な指標として肝の糖代謝律速酵素活性の変動を経時的に測定し,次の結果を得た.肝に特異的な糖新生系のglucose 6-phosphataseおよびfructose1, 6-diphosphatase, 解糖系のglucokinaseおよびpyruvate kinase L型の活性は低下し,肝に非特異的な解糖系のlow-Km hexokinase, phosphofructokinase, pyruvate kinase M2型および五炭糖リン酸回路のglucose 6-phosphate dehydrogenaseの活性は上昇した.これらの酵素活性の変動は四塩化炭素などの肝毒物による急性肝実質障害時のそれと同様未分化な様式を示し,その酵素偏倚の程度も肝毒物による肝実質障害にほぼ匹敵するものであった.この結果は閉塞性黄疸時に糖代謝をはじめ種々の肝機能障害の存在を示唆するもので閉塞性黄疸時の診断および治療面での重要な知見と考えられる.

キーワード
閉塞性黄疸, 肝糖代謝律速酵素, 肝実質障害, 糖新生, 解糖

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。