[書誌情報] [全文PDF] (2696KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(5): 401-408, 1984


原著

虚血心筋再灌流障害の研究
-再灌流時心筋に及ぼすCatecholamineの影響-

順天堂大学 胸部外科

小関 雅義

(昭和58年6月22日受付)

I.内容要旨
Global ischemiaの後の再灌流は心機能を血行動態,代謝の面で大きく低下させる.この過程には,細胞内Ca2+が重要な役割りをなしている.心機能向上のためCatecholamine(CA)が臨床上この時期に使用されるがこのCAは細胞内Ca2+の動態を直接修飾する薬剤であるため,Global ischemia後の再灌流期に使用するCAが,血行動態,冠循環,心筋代謝及び超微形態に及ぼす影響について検討した.
気管内挿管麻酔下,開胸雑種成犬26頭を用い,人工心肺下軽度低体温とし,60分間のGlobal ischemiaの後に,約15分間人工心肺の補助の下に復温し人工心肺を離脱した.再灌流は60分間行い,生理的食塩水を持続点滴した群(Control群)6頭,Epinephrine 1μg/kg/minを持続点滴した群(E-I群)7頭,Epinephrine 0.1μg/kg/minを持続点滴した群(E-II群)6頭,Dobutamine 5μg/kg/minを持続点滴した群(D群)7頭の4群に分け比較検討した.測定は,心拍数(HR)平均大動脈圧(mean-AP)左室拡張終期圧(LVEDP)心拍出量(CO)冠血流量(CBF)の各々を人工心肺開始前,再灌流30分,60分で行い,冠状洞静脈血中のMB-CPKとm-ASTも測定した.再灌流60分で心筋を採取し,組織内Ca, ATP Creatine phosphateの含量も測定した.電顕による観察はscore法により半定量的に評価を行なった.
結果は,血行動態諸示標では再灌流60分でE-I群が有意に高く,E-II群D群ともControl群有意差がなかった.組織内Ca Water ContentでもE-I群が高値を示した.組織内ATP含量は,心内膜心筋で, E-I群が有意に低値を示し,心筋超微形態では,mitochondriaの破壊程度は,E-I群で有意に強かった.
以上より, 60分のGlobal ischemia後のCAの投与は,血行動態指標の低下を抑えるが,組織内Caを増加させ,心筋微細構造の保存,高エネルギーリン酸化合物の産生回復には不利であることが示唆された. これは,特にEpinephrineを大量投与した場合に著しかつた.

キーワード
再灌流障害, Cardioplegia, Catecholamine, 心筋代謝, 心筋超微形態

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。