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日外会誌. 85(4): 338-345, 1984


原著

人膵管癌の電顕的考察

大阪市立大学 医学部第1外科

沈 敬補 , 佐竹 克介 , 曽和 融生 , 梅山 馨

(昭和58年6月18日受付)

I.内容要旨
人膵癌の病理組織学的分類は主に光顕的に検討され,電顕的な検討は少ない.著者らは人膵管癌を主に電顕的に検討し以下の成績を得た.
1) 高および中分化型管状腺癌で腺管構成細胞にそれぞれ異つた特徴を示す3種類の腫瘍細胞が観察された.
a) Type 1. Indentationの著明な不正形の大きな核をもち,細胞内小器官は粗で,多数のelectron lucentな粘液顆粒を腺腔側に有し,細胞質突起や細胞間のmicrocystが多く認められた.この細胞は粘液産生性の高円柱上皮由来のものと考えられた.
b) Type 2. 著明に発達した核小体を有する立方状の細胞で,細胞質内では顆粒はみられず,細胞内小器官の発達も粗で,細胞質突起やmicrovilliは非常によく発達していた.この細胞は介在部導管上皮細胞に類似し,比較的細い膵管上皮細胞より発生したものと考えられた.
c) Type 3. 核は比較的楕円形を呈するものから不正形を呈するものがみられた.細胞質内では多数のチモーゲン顆粒を有し,細胞内小器官の発達したもの,チモーゲン顆粒は少数で,電子密度の高い細長い顆粒様構造物を有し細胞内小器官も比較的発達のよいもの,さらに,核・細胞質比の増大がみられ,細胞内小器官の発達の粗なものが認められた.これらの所見は腺房細胞の脱分化像と考えられた.
2) 低分化型管状腺癌では,核は大きく不正形で核小体の発達はよく,細胞の極性は全くみられないが,細胞内小器官の発達は比較的よく,少数のチモーゲン様顆粒が認められた.
以上の結果から,従来,膵管癌と考えられてきたものの中に腺房細胞癌と思われるものが存在した.

キーワード
人膵管癌, 膵管状腺癌, 腺房細胞癌, チモーゲン顆粒


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