[書誌情報] [全文PDF] (3418KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(3): 244-253, 1984


原著

腹部迷走神経後幹と腹腔枝の膵グルカゴン,インスリン,ガストリン,セクレチン分泌に及ぼす影響に関する実験的研究

新潟大学 医学部外科学教室第1講座(主任:武藤輝一教授)

田宮 洋一

(昭和58年5月21日受付)

I.内容要旨
腹部迷走神経後幹と腹腔枝が膵グルカゴン,インスリン,ガストリン,セクレチンの各分泌におよぼす影響に差があるか否か検討するために,雑種成犬を用い,両神経にそれぞれ電気刺激を加えた時の血漿中の各ホルモンの反応を比較し,以下の結果を得た.
1) 後幹電気刺激群(P-S群)と腹腔枝電気剌激群(C-S群)は共に頭側膵十二指腸静脈(PDV)の血漿流量は不変であったが,血漿中の膵グルカゴン値(GI)とインスリン値(IRI)が上昇し,膵からの膵グルカゴンとインスリンの拍出量は増加した.この増加の程度と時間は両群でほとんど差がなかったので,後幹と腹腔枝は膵グルカゴンとインスリンの分泌を同程度に促進するものと考えられる.したがつて,後幹の両ホルモン分泌促進効果は腹腔枝を介して発現されるものと思われる.
2) 門脈のGIとIRIは,P-S群では上昇したがC-S群では変動せず,両群で異なった反応を示した.著者は門脈の血流量を測定していないが,これは,電気剌激による門脈血流量の変動が両群で差があるためと考えられ,C-S群では門脈血流量がホルモン分泌量を上まわって増加し,一方P-S群では増加しても少ないかあるいは不変であることが推測される.
3) 門脈の血漿中ガストリン値(IRG)はP-S群で上昇した.これは主に後幹の分枝である後幽門洞枝を介して幽門洞ガストリンの分泌が促進されたことによると考えられる.一方,C-S群では門脈のIRGは不変であったが,門脈血流量は増加すると推測されるので,腹腔枝を介して胃外性ガストリン分泌が促進された可能性があると思われる.
4) 門脈の血漿中セクレチン値(IRS)はP-S群では,不変,C-S群では低下したが,これは門脈血流量の変動に大きな影響を受けると考えられるので,後幹と腹腔枝のセクレチン分泌におよぼす影響については,今後,血流量も測定して検討しなければならない.

キーワード
迷走神経, 膵グルカゴン, インスリン, ガストリン, セクレチン

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。