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日外会誌. 85(3): 191-205, 1984


原著

外科領域におけるFibrinopeptide Aの臨床的意義

岐阜大学 第1外科(指導:稲田潔教授)

不破 誠行

(昭和58年4月28日受付)

I.内容要旨
各種血栓性疾患の診断に最近開発された新しい測定法でFibrinopeptide A(以下FPA)を測定し,その臨床的意義につきβ-thromboglobulin(以下β-TG)とあわせて検討した.さらに術後深部静脈血栓症(以下術後DVT)のスクリーニングとして,また悪性腫瘍患者,および開心術時にFPAを測定し次の結果を得た.
1) FPAのBentonite吸着法による測定法は迅速,簡便,かつ鋭敏で十分臨床応用に耐えうる.2) 血漿FPAが健常者に比し有意(p<0.01)に高値を示す疾患は閉塞性動脈硬化症,大動脈瘤,心疾患,悪性腫瘍,糖尿病の5群であった.3) FPAとβ-TG,FPAとフィブリノーゲンの間にはいずれも相関を認めなかった.4) FPAは急性期の血栓塞栓症の診断に有用でありβ-TGを併用すれば優れた診断的精度が得られる.このさいの診断基準は5ng/ml以上,または β-TG 50ng/ml以上である.5) FPAは急性静脈血栓症,β-TGは急性動脈閉塞症で診断上,より高い鋭敏度(前者100%,後者64%)を示した.6) 下肢関節手術患者16例の術後DVTのスクリーニングで5例(31%)にDVT発生を認めた.FPA,β-TGは5例すべてに著しい上昇と日変動較差を認め,診断に有用と思われた.7) 胃癌患者において,手術所見で腫瘍長径が3cm以上の患者では3cm未満の患者に比しFPAが有意に高く(p<0.02),癌の進展や活性度の評価にFPAの有用性が示唆された.8) 心疾患患者15例の開心術時の検索では,体外循環中FPAは平均14.2ng/mlと異常の高値を示した.体外循環中のヘパリン投与の抗凝固,抗血栓効果判定にFPAが有用な指標となりうると思われた.

キーワード
Fibrinopeptide A, β-thromboglobulin, 術後深部静脈血栓症, 悪性腫瘍, 体外循環

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