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日外会誌. 85(2): 182-187, 1984


原著

鈍的外力による外傷性右横隔膜ヘルニア

大阪大学 特殊救急部

定光 大海 , 澤田 祐介 , 杉本 寿 , 西出 和幸 , 吉岡 敏治 , 杉本 侃

(昭和58年3月23日受付)

I.内容要旨
鈍的外力による外傷性右横隔膜ヘルニアの発現機序及びヘルニア発症様式について検討した.
大阪大学医学部特殊救急部にて経験した外傷性横隔膜ヘルニア13例のうち3例が右側発生例であった.これらはいずれも交通事故などの鈍的圧迫外傷で胸,腹,骨盤等に重症外傷を合併した.肋骨骨折,血胸,肝損傷はいずれも破裂横隔膜と同側にみられた.
外傷性横隔膜ヘルニアの発現機序として,腹部への強力な外力による急激な腹圧の上昇が従来強調され,左右差は発生頻度差で説明されてきたが,むしろ外力の加わり方そのものに差があることが示唆されたため,外傷性右横隔膜ヘルニア本邦過去報告例40例を集計し,受傷機転,合併損傷,破裂部位,脱出臓器について検討した.
合併損傷をみると,肋骨骨折など胸部損傷が最も多く,肝以外の腹部臓器損傷の頻度は左横隔膜ヘルニアとくらべて低かった.破裂部位も腱中心を介して広範囲に破れる例が多くみられた.これらより右横隔膜破裂の発現機序として,右胸郭を中心に加わる強力な平面的外力が主要因と考えられた.
破裂部位からの腹部臓器脱出は各症例で様々な形を呈し,受傷から診断までの時間に著しい差がみられた.急性期に診断された例には肝破裂などの緊急開腹術を要した例が多く,そうでない例で診断が遷延する傾向がみられた.脱出臓器は肝右葉が最も多く,遅発型で消化管脱出を合併する率が高かった.

キーワード
外傷性右横隔膜ヘルニア, 鈍的外力, 発現機序, 発症様式

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