[書誌情報] [全文PDF] (2945KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(2): 175-181, 1984


原著

乳管内乳頭腫からの癌発生に関する研究

*) 東北大学 医学部第2外科学教室
**) 東北大学抗酸菌病研究所 病理学部門
***) 東北大学付属病院 病理部
****) 東北大学 医学部第1病理学教室

大内 憲明*) , 阿部 力哉*) , 高橋 徹**) , 手塚 文明***) , 京極 方久****)

(昭和58年3月5日受付)

I.内容要旨
乳管内乳頭腫からの癌発生とその部位を明らかにする目的で,乳管腺葉区域切除術で得られた乳頭腫16例を3次元復構した結果,4例に乳管癌の共存を認めた.
(1) 乳頭腫の孤立性,多発性別では孤立性6例中1例(16.7%)に対し,多発性10例中3例(30.0%)と,多発性乳頭腫が高い癌の共存率を示した.
(2) 発生部位別では末梢乳管 (terminal duct lobular units, TDLU)より発生した乳頭腫では11例中4例(36.4%)に癌の共存をみたのに対し,中心乳管 (large ducts)より発生した乳頭腫5例では癌の共存を認めなかった.
(3) 乳頭腫と癌は乳管内で連続し,また,1例ではあるが,きわめて微小な癌を乳頭腫内に認めた(cancer in papilloma)ことから,乳頭腫が重要な前癌病変であることが裏付けられた.
(4) 乳管内癌はすべてTDLUから発生しており,TDLUは多発性乳頭腫のみならず癌の発生部位であることが示された.
(5) 癌発生を伴った1例の孤立性乳頭腫は乳輪下からでなく,末梢(TDLU)から発生したものであった.したがつて前癌性性格の有無から乳頭腫を取り扱うにあたつては,従来の孤立性,多発性の分類より,発生部位別に中心性,末梢性のいかんによる分類が合理的と思われた.

キーワード
乳管内乳頭腫, 乳管癌, 癌の発生部位, 3次元復構

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。