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日外会誌. 85(2): 153-159, 1984


原著

直腸癌術後局所再発に対する仙骨合併残存骨盤内臓器全摘出術
-特に血清CEAと骨盤部CTの意義について-

愛知県がんセンター病院 第三外科

高木 弘 , 森本 剛史 , 加藤 知行 , 安江 満悟 , 加藤 王千 , 山田 栄吉

(昭和58年4月14日受付)

I.内容要旨
直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術後の再発症例の約半数は局所再発であり,その治療は放射線照射と抗癌剤投与が主体である.しかしこれらは症状の一時的緩解には効果はあつても,生存期間の延長には有意の効果を与えていない.これら直腸癌術後局所再発の6症例に仙骨合併残存骨盤内臓器全摘出と回腸導管膀眺造設術を実施した.男性が5例,女性が1例で年齢は43歳から71歳(平均55歳)である.手術時期は6.5~13時間(平均9時間15分),出血量は3,000~12,000ml(平均6,800ml)であった.仙骨はS2-3で切断しているが,杖などの助けなく普通に歩行可能である.手術死はなく,術後合併症も治癒している.症例1は術後16カ月,肺,肝転移から死亡したが,他の5症例はそれぞれ術後11カ月, 9.5カ月,5カ月,2カ月,2週間現在疼痛などの苦痛から解放されて生存している.
術前の血清CEA値は症例1は異常高値を示したが,症例2, 3, 4は軽度から中等度上昇値を示し,症例6は境界値を示した.血清CEA測定は再発の早期診断には不十分であるが,本手術後血清CEA値が急速に正常範囲に下降することは,一応主再発病巣が摘出されたことを示す.また異常な高値は遠隔転移の可能性があり,放射線治療をまず行って経過観察後,適応を決定すべきである.骨盤部CT検査において6症例のすべてに異常腫瘍陰影を認めており,病巣の局在と拡がりを示して有用である.
本手術術式は直腸癌局所再発の治療として一応の合理性をもつており,再発の早期診断が進歩すれば,長期生存症例の出現する可能性があるものと期待している.

キーワード
直腸癌再発, 血清CEA, 骨盤内臓器全摘出術, 仙骨切除

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