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日外会誌. 85(2): 119-131, 1984


原著

胸部迷走神経切離後の肺血管外水分量の変化
-胸部食道癌根治手術後の肺合併症発生に関連した実験的研究-

東京大学 第2外科(主任:和田達雄教授)

金丸 仁

(昭和58年4月20日受付)

I.内容要旨
胸部食道癌根治手術後の肺合併症と迷走神経損傷の関連を解明する目的で二つの実験を行なった.実験Iでは雑種成犬18頭を用い,胸部迷走神経切雑(以下迷切)後3日間の肺血管外水分量(以下EVLW)の変化を検討した.実験IIでは雑種成犬8頭を用い,迷切後2日目に生理食塩水を段階的に負荷した場合のEVLWの変化を観察した.EVLWの測定は,lung water computorを用いて二重指示薬希釈法により行ない,以下のような結果を得た.
1) 二重指示薬希釈法により測定したEVLWは乾燥重量法により測定したEVLWと極めて高い相関(r=0.936)を示した.
2) 迷切後はEVLWが日を追つて増加した.増加程度は一側(右)迷切よりも両側迷切の場合の方が大きかった.
3) 迷切群と非迷切群で,血行動態及び膠質浸透圧に差を認めなかったことから,EVLWの増加は肺毛細管壁の透過性の亢進に起因すると推察された.
4) 迷切後2日目に生食を負荷すると,負荷量の増加に伴つてEVLWが増加した.迷切を行なわなかった場合は負荷によつてもEVLWの変化をみなかった.
実験結果から,迷走神経の損傷は,胸部食道癌根治手術後の肺合併症の準備状態をつくり出すことが考えられた.

キーワード
迷走神経切離(迷切), 食道癌術後肺合併症, 肺血管外水分量, 二重指示薬希釈法


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