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日外会誌. 85(2): 93-101, 1984


原著

メラノーマ患者における細胞性免疫能のin vivoでの評価

1) 日本医科大学 第2外科
2) Duke University Medical center 

秋丸 琥甫1) , 庄司 佑1) , H.F Seigler, M.D.2)

(昭和58年4月13日受付)

I.内容要旨
継代培養されたメラノーマ癌細胞 (SH-Me cell)に対するメラノーマ患者の細胞性免疫能をin vivoで検索した.この癌細胞は1×107個をヌードマウス(予め350RのX線照射をうけた)の腹腔内に注射すると,癌性腹膜炎で平均23.8±2.6日で死亡した (N=12).SH-Me cell 1 ×107個に同数の健常人末梢血リンパ球を混合して,同様に腹腔内に注射すると,平均22.0±2.3日で死亡した(コントロール群,N=8).健常者5人の末梢血リンパ球をフラスコ内のSH-Me cell単層上で感作してから1×107のSH-Me癌細胞を1対1の割合で混合し同様に注射したが,コントロール群に比して,一人のリンパ球がマウスの寿命を延長した.
20人のメラノーマ患者について,彼等のリンパ球による延命効果を検索するため,同様にSH-Me cellと同数混合してヌードマウスに腹腔内注射した.15人のリンパ球がコントロール群に比して,それぞれマウスの寿命を有意の差をもつて延長した.15人中8人は特異的能働的免疫法(培養メラノーマ癌細胞ワクチン) をうけており, 7人は手術療法のみであった.マウスは,延命しても結局は全て癌性腹膜炎で死亡しており,リンパ球が癌細胞の増殖に,ある程度ブレーキをかけていたと考えられた.この効果は,メラノーマ癌細胞の特異抗原に対する特異的細胞性免疫反応によると思われた.なぜなら,アロ抗原に対する正常リンパ球の反応では,癌細胞増殖を抑制できなかった.メラノーマ患者は特異的免疫療法により,或いは自然に担癌状態から,メラノーマ特異抗原に対する細胞性免疫能を得たと思われる.患者リンパ球によるマウスの延命効果とメラノーマの深達度,或いは病期との間に特別な関係は認められなかった.
本実験モデルは,癌患者の腫瘍に対する免疫能をin vivoで検索するのに有用と思われる.

キーワード
ヌードマウス, ヒトメラノーマ細胞, 末梢血リンパ球in vivo実験, 細胞性免疫能


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