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日外会誌. 85(1): 65-76, 1984


原著

小口径代用血管としてのGlutaraldehyde固定ヒト𦜝帯血管
-基礎的,臨床的検討-

旭川医科大学 第1外科

笹嶋 唯博

(昭和58年3月30日受付)

I.内容要旨
小口径代用血管としてGlutaraldehyde (GA) 固定ヒト𦜝帯血管 (PHUV) につき基礎的,臨床的に検討し適応限界と問題点を明らかにした.対象はDardik Biograft及び自家調整𦜝帯静脈及び動脈である.
基礎的検討:血液適合性を評価するため雑犬腹部大動脈移植30~60分後の剔出Graft内面性状を観察した.PHUVの内皮下層は血液適合性が高く,これが欠損している部分には血栓形成が顕著であった.引つ張り強度試験では未処理及びGA濃度0.65~1.2%固定Graftについて比較した. GA濃度が高い程強度を増すが弾性は損なわれた.Complianceの測定ではPHUVはイヌ腹部大動脈の1/5でむしろ人工血管に近く宿主血管とのCompliance Mismatchは解消されないと考えられた.慢性移植実験は雑犬35頭に42Graftを頚動脈,腹部大動脈,大動脈左冠動脈間に移植し1週から12カ月まで観察した.剔出標本の内面は移植早期ではフィブリンに覆われ9カ月でも吻合部1cmまでのPannus形成にとどまった.閉塞例では吻合部内膜肥厚が特徴的であった. Graft壁への細胞侵入,変性劣化,石灰化はみられず異物炎も軽度であった.
臨床的検討: ASOではBiograftを52例72肢に使用した.5年の累積開存率は63%,術式別では大腿膝窩動脈Bypassが62.9%,大腿脛骨動脈Bypass20%であった.移植早期のGraft血流量は250ml/分以上で88.5%,使用Graft内径6mmで90.3%の開存率を示した.閉塞は早期でTechnical Error,6カ月以降では吻合部内膜肥厚が主因で,TAOは成績不良であった.
結論としてBiograftは膝窩動脈までを適応限界としGraft内径は6mmを使用すべきである.また成績向上のためには吻合部内膜肥厚の原因と対策究明が不可欠である.

キーワード
保存ヒト𦜝帯静脈, 小口径代用血管, 吻合部内膜肥厚

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