[書誌情報] [全文PDF] (2135KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 85(1): 49-55, 1984


原著

脾部分切除の実験モデル作成と脾の再生に関する研究

*) 東北大学 医学部第2外科
**) Columbus Children's Hospital 

千葉 庸夫*) , E. Thomas Boles Jr.**) , Gloria Staples**)

(昭和58年3月26日受付)

I.内容要旨
摘脾後の重症感染症の予防策の1つとして脾の部分切除がなされているが,どれだけの脾を残せば予防し得るかに関しては一定の見解が得られていない.この問題を解決するためには適切な実験モデルを作成し,また結果に重要な影響をもたらす“再生”について検討をすることが必要である.これらの点について究明するために約500匹のラットを用いて,モデルの作成,再生について検討した結果,
1) 脾の重量は脾の長さと相関関係を示すところから,脾の長さをもとにして算定した長さを指標に楔状の切除をおこなうことにより,きわめて正確な部分切除モデルを作成することができる.
2) 部分切除後の残存脾では,全例に再生現象がみられ,その再生は重量でみれば,切除の大きさにかかわらず,ほぼ同量ずつ増加するが,残存脾が大きいほど早期に増加がみられなくなり,残存脾の小さいものでは増加が続いた.
3) 増加の割合をみれば,1/3切除例では手術時残存脾重量の20%の増加にも達しないで平衡に達するが,2/3切除例では約50%に,4/5切除例では100%以上の増加がみられた.
以上の結果,脾の部分切除後は,生体反応として再生がおこり,残存脾が小さいものほど迅速に再生をつづけ,これが感染の防禦に役立つ可能性が大きいと思われる.

キーワード
摘脾後感染症, 脾部分切除, 脾再生, 実験モデル


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。