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日外会誌. 85(1): 38-48, 1984


原著

糖尿病ラットにおける単離膵ラ島同種移植に関する研究
-とくに培養膵ラ島移植について-

大阪市立大学 医学部外科学第1教室(主任:梅山馨)

西野 裕二

(昭和58年3月16日受付)

I.内容要旨
単離膵ラ島移植において膵ラ島自身に組織適合性抗原が存在し,同種移植では早期に拒絶反応がみられる.一方,単離膵ラ島を培養した後に移植すると生着の延長を示すとの報告がある.そこで著者は単離膵ラ島を培養した後に同種移植を行ない単離直後移植群との成績について比較検討した.実験動物は組織適合性抗原の異なる二種のラットを用い,WKA系ラットをdonor,LEJ系ラットをrecipientとし,免疫抑制剤は使用しなかった.
I) Donor膵より単離したラ島約500個をStreptozotocin糖尿病recipientの脾内に移植した結果,単離直後膵ラ島移植群の平均生着日数(MST)が12.2±4.3日であったのに対し,4日間培養後の膵ラ島を移植した群のMSTは15.0±2.1日,7日間培養後移植群のMSTは26.4±4.8日,14日間培養後移植群のMSTは18.2±4.5日といずれも培養群で生着の延長がみられ,とくに7日間培養後移植群では著明にMSTの延長がみられた.
II) Donor脾細胞1×l08個をrecipientの腹腔内に注入して一次反応を誘導し,14日後にrecipientの脾内に単離直後および7日間培養後のdonor膵ラ島約500個をそれぞれ移植しrecipientに二次反応を誘導した.その結果,7日間培養後移植群では単離直後移植群に比して若干生着日数の延長がみられた.
III) そこで培養膵ラ島の抗原性の変化について,X線照射したdonor膵ラ島とrecipientリンパ球の混合培養により,膵ラ島に対するリンパ球の応答性について検討した結果,単離直後の膵ラ島に対するリンパ球の応答性と7日間培養後の膵ラ島に対するリンパ球のそれとを比較すると,培養膵ラ島に対するリンパ球の応答性は有意に低下した.
以上の知見から培養,ことに7日間培養後の膵ラ島を同種移植すると明らかに生着の延長がみられ,また培養により膵ラ島の抗原性が変化したことが強く示唆された.

キーワード
同種移植, 単離膵ラ島, 培養膵ラ島, 組織適合性抗原, 混合培養

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