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日外会誌. 85(1): 1-5, 1984


原著

腹膜炎ショック時の肝糖代謝

札幌医科大学 第1外科

江端 俊彰 , 平田 公一 , 伝野 隆一 , 後藤 幸夫 , 東 薫 , 石田 君子 , 長谷川 格 , 早坂 滉

(昭和58年3月16日受付)

I.内容要旨
腹膜炎によるエンドトキシンショック時の肝の糖代謝につきglycolytic intermediateとglucoregulatory enzymesを定量し検討した.腹膜炎群におけるglycolytic intermediateはsham-operated群と比較し,glucose-6-phosphate (G6P),fructose-6-phosphate (F6P) が33%,40%の減少を示した.Fructose-1,6-diphosphate (FDP) は135%の増加を認めたが,phosphoenolpyruvate (PEP) は有意差を呈さなかった.Pyruvateは176%の増加を示し,glycolysisの最終産物であるlactateは207%の著明な増加を示した. Glycolysisの key enzymeである phosphofructokinase (PFKase),pyruvatekinase (PKase) は腹膜炎群で13%,14%の有意な増加を呈した.GIuconeogenesisのkey enzymeであるglucose-6-phosphatase (G6Pase),fructose-1,6-diphosphatase (FDPase) は有意差を示さなかった.以上の結果より,エンドトキシンショックではPFKaseの活性化によりFDPが蓄積される.FDPはPKaseを活性化し, PEPを枯渇させ, glycolysisの進行を促すものと考えられる.またエンドトキシンショックではcellular hypoxiaにより,ミトコンドリアでのKrebs回路の回転が阻害されるために, gluconeogenesisが抑制され, glycolysisの亢進により,乳酸が蓄積されて細胞内の代謝活性は低下し,不可逆性の細胞障害へと進行することが示唆された.

キーワード
腹膜炎, 工ンドトキシンショック, glycolytic intermediate, gluconeogenesis, glucoregulatory enzyme

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