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日外会誌. 84(12): 1251-1258, 1983


原著

食道がんに対する温熱・エタノール・化学療法に関する実験的研究
第1編マイクロ法を応用したin vitroの検討

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)研究部門 指導: (服部孝雄教授)

多幾山 渉

(昭和58年3月5日受付)

I.内容要旨
進行食道がん患者に対する局所温熱,bleomycin,およびエタノールの3者併用療法の臨床応用に関する研究の一環として,これら3者の抗腫瘍効果について,in vitroで継代しているFM3A細胞と3HTdR を用いたマイクロプレート法を応用して実験的に検討した.FM3A細胞に対する温熱のcytotoxicityは,43℃では加温時間に比例して上昇し,60分で極めて強く出現した.しかし,41℃ 60分のcytotoxicityは軽度であつた.エタノールのcytotoxicityは4%で出現し, 8% 60分では極めて強く出現した. bleomycinのcytotoxicityは,40μg/ml 60分間の処理でも比較的軽度であつた.温熱とbleomycin併用によるcytotoxicityは,41℃および43℃において相加的に増強した.低濃度エタノール (2~4%) とbleomycin併用によるcytotoxicityも相加的に増強した.一方,低濃度エタノールと比較的低い温熱 (41℃) の併用により,cytotoxicityは相乗的に増強した.さらに,低濃度エタノール,比較的低い温熱およびbleomycinの3者併用により,極めて強いcytotoxicityが得られた.以上の実験結果より,エタノールを併用することにより,局所温熱の温度を正常組織にはほとんど影響を及ぼさない程度まで低下しても,強い抗腫瘍効果が期待できることが明らかにされた.したがつて,温熱およびbleomycinにエタノールを併用することは,抗腫瘍効果を増強しながら侵襲を低下させることが期待できるので,全身状態不良の患者が比較的多い進行食道がん患者の治療にとつて有用と思われる.

キーワード
食道がん, FM3A細胞, 温熱療法, がん化学療法, エタノール

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