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日外会誌. 84(11): 1174-1185, 1983


原著

先天性胆道拡張症における胆管拡張機序の研究

名古屋大学 第1外科(指導:弥政洋太郎教授)

安藤 久実

(昭和58年2月14日受付)

I.内容要旨
先天性胆道拡張症においては,種々の程度に胆管の拡張がみられるが, このような差はいかなる機序により生ずるのか, という問題について検討した.
2カ月から11歳までの小児先天性胆道拡張症44例を対象として,術中胆道造影,ERCP,PTCによつて得られた胆管像をもとに,年齢,共通管の長さ,総胆管下部狭窄部の巾および長さと最大胆管横径との関連を検討した.その結果,総胆管下部の状況が明瞭でかつ狭窄のみられる例においては,最大胆管横径(Y) は総胆管下部狭窄部の長さ(X) とのみ密接な関連が認められ,log Y=0.068X+1.06 (r=0.934,p<0.001,n=19) の関係式が得られた.
また,嚢胞空腸吻合術後2年から12年を経過した7例にERCPを施行し,最大胆管横径と総胆管下部狭窄部の長さとの関連について検討したところ,先に得られた関係式にほぼ一致する関連が認められた.
次に,雑種成犬の総胆管下部に内径1.6mm,外径2.7mm,長さ1.0mm,4.0mm,8.0mmのビニールチューブを巻いて狭窄を作成した. 1~2カ月後に犠牲剖検を行い,チューブの長さ(X’) と最大胆管横径 (Y’) との関連について検討したところ, log Y’=0.060X’+0.88 (r=0.972,p<0.001,n=18) の関係式が得られた.
以上の結果より,胆管の拡張程度は総胆管下部狭窄部の長さと密接な関連があり,先天性胆道拡張症における総胆管拡張の原因は,膵液逆流に伴う胆管壁の脆弱化などよりも,狭窄に伴う胆汁の流出抵抗にあることが示唆された.

キーワード
先天性胆道拡張症, 胆管拡張因子, 総胆管下部狭窄部

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