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日外会誌. 84(11): 1161-1173, 1983


原著

各種胆道再建術の胃酸分泌および消化管ホルモン分泌におよぼす影響に関する実験的研究

東北大学 第一外科(主任:佐藤寿雄教授)

今村 幹雄

(昭和58年1月29日受付)

I.内容要旨
臨床的にRoux-Yによる胆管空腸吻合術(以下, Roux-Y)後における消化性潰瘍の発生が報告され,胆道再建術施行上,重大な問題となつている.Roux-Y後の病態生理としては,従来, biliary diversion の関与が指摘されているが,胆道再建に用いる上部空腸の長さ,あるいは,消化管ホルモン動態などについては未だ詳細な検討はなされていない.そこで,犬を用い, Roux-Yを含め各種の胆道再建術を施行し,胃酸分泌およびこれと関係の深い消化管ホルモン動態について検討した.
雑種成犬17頭を用い,胃体部にHeidenhain pouchを作成したのち,高蛋白食による食餌負荷試験を施行した.この際,HP胃瘻より胃液を採取し,また,末梢静脈より採血を6時間後まで経時的に行い,これらを対照とした.その後,犬を3群に分け, 3種の胆道再建術を施行した.すなわち,I群:15cmの空腸間置による胆嚢十二指腸吻合術 (n=5),II群:50cmの空腸間置による胆嚢十二指腸吻合術 (n=5),III群:40cmの空腸脚を用いたRoux-Yによる胆嚢空腸吻合術 (n=7) とした.術後,対照と同様に食餌負荷試験を施行した.消化管ホルモンは血漿ガストリン,セクレチン,GIPおよびtotal-GLIをRIA法にて測定した.
消化性潰瘍はIII群においてのみ発生し, 7頭中2頭 (29%) で十二指腸潰瘍を認めた.食餌負荷後6時間の総酸分泌量は,いずれの群でも手術前後で有意の変動は示さなかった.一方,胃酸分泌パターンは, III群においてピークが遅れて出現し,しかも,酸分泌亢進状態が遷延した.従つて, Roux-Y後の消化性潰瘍の発生と酸分泌パターンの変化との関連が推定された.消化管ホルモン分泌は,biliary diversionの有無,胆道再建に用いる上部空腸の長さ等により影響を受けると考えられた.上記の3種の胆道再建術式では, 胃酸および消化管ホルモン分泌の面からみて, I群が最も生理的な術式であることが確認された.

キーワード
胆道再建術, 胃酸分泌, 消化性潰瘍, 消化管ホルモン

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