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日外会誌. 84(11): 1117-1129, 1983


原著

癌の腹膜播種に対する持続温熱腹膜灌流療法に関する実験的研究

鳥取大学 医学部外科学第1教室(主任:古賀成昌教授)

浜副 隆一

(昭和58年2月1日受付)

I.内容要旨
温熱療法を胃癌の腹膜播種性転移例に対する治療に応用するための基礎的研究として, ラットのAH100B腹水肝癌細胞の温熱感受性を検討したのち,これの腹腔内移植によるラットの実験的腹膜播種に対してMitomycin Cを併用した持続温熱腹膜灌流(CHPP)を施行し,その抗腫瘍効果および温熱許容範囲について検討した.
まず, AH100B腹水肝癌細胞のin vitro加温培養では,温熱の殺細胞効果は41.5℃以上の温度域で発現され,培養温度の上昇および培養時間の延長につれて増大した.さらにMitomycin Cを添加した加温培養では, Mitomycin Cを10μg/mlの濃度で添加した群において3時間培養以降に,温熱とMitomycin Cとの併用殺細胞効果の増強が認められた.
次に, AH100B腹水肝癌細胞を腹腔内に移植した担癌ラットの腹腔内をCHPPにより加温したところ, 41.5℃灌流群での灌流による直接死亡は4%にみられたが, 42.5℃灌流群では54%と高率であつた.CHPP前後でのAH100B腹水肝癌細胞の細胞学的変化は42.5℃灌流群および41.5℃灌流+Mitomycin C ip投与併用群において進行性の変化がみられた. 一方, CHPPによる延命効果は41.5℃灌流+ Mitomycin C ip投与併用群で著しく,対照群およびMitomycin C ip投与単独群に比較して有意の差をもつて生存日数の延長が認められた.
また,温熱の抗腫瘍効果はin vitroにおけるよりもin vivoにおいて著明であつた.
以上より,温熱だけの処置では不十分な効果しか得られない場合でも,温熱に制癌剤を併用することによつてその抗腫瘍効果を増強させることが可能であると思われる.したがつて,制癌剤を併用したCHPP法は癌の腹膜播種性転移に対して有用な治療法になりうると思われる.

キーワード
Hyperthermia, Hyperthermochemotherapy, 持続腹膜灌流, 腹膜播種, AH100B腹水肝癌細胞


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