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書誌情報]
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日外会誌. 84(10): 1084-1093, 1983
原著
大腸亜全摘後の代償性回腸粘膜増殖
I.内容要旨大腸全摘後に回腸粘膜が増殖するということはいくつかの報告でも確認されている.この形態的変化は,大腸欠損後に小腸が吸収能の増加からその機能を代償するという点で臨床的にも重要な意味をもつている.しかし, この粘膜増殖の成因は明らかにされておらず,現在では大別して,食物中の栄養素や胆汁,膵液などの腸管内因子と消化管ホルモンなどの体液因子が考えられている.
我々は, ラットを用いて,①大腸亜全摘群,②大腸空置群,③回腸盲腸吻合群(コントロール)の3つの群にそれぞれ空置回腸を設置し,回腸の腸内容の通過部と腸内容の通らない空置部における粘膜の形態的変化およびDNA量,DNA放射性活性の変化を観察,測定し,回腸粘膜が,腸管内因子,体液因子,大腸広範切除,大腸空置,体重および術後日数などによつてどのような影響を受けるかを調べ, どの因子が粘膜増殖に関与するかを分散共分散分析により検定した.
その結果,回腸粘膜は大腸空置によつてはあまり影響を受けないが,腸管内因子と大腸広範切除によつて強く影響を受けることが分り,さらに,腸管内因子の影響が除外できる空置部だけの分析でも,なお,回腸粘膜は大腸切除によつて影響を受けることが分つた.このことから,大腸広範切除後には特異的な回腸粘膜増殖が起こり,その因子として,体液因子が強く関与していることが示唆された.
キーワード
大腸亜全摘, 大腸空置, 回腸DNA量, DNA放射性活性, 回腸粘膜増殖
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