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日外会誌. 84(8): 692-702, 1983


原著

急性門脈遮断時の凝固線溶系変化に関する実験的研究

名古屋大学 医学部第2外科(指導:近藤達平教授)

中尾 昭公

(昭和57年11月24日受付)

I.内容要旨
急性門脈遮断の凝固線溶系に及ぼす影響について詳細に検討された報告はない.
著者は急性門脈遮断の凝固線溶系に及ぼす影響について実験的研究を施行した.
雑種成犬5頭を静脈麻酔下に開腹し,門脈を結紮した(結紮群).同様に雑種成犬5頭を門脈結紮と同時に門脈血を親水性ヘパリン化カテーテルにて大腿静脈ヘバイパスした(バイパス群).両群とも末梢静脈血ならびに門脈血を経時的に採取し,血液凝固線溶系の変化を測定し,比較検討した.併せて小腸組織も経時的に採取し,その組織変化と組織プラスミノーゲンアクチベーター活性変化についても観察した.
結紮群は門脈結紮後81~130分(平均105分)で5頭すべて死亡したが,バイパス群は4時問後も5頭すべて元気に生存した.
結紮群では門脈結紮後,門脈血の急激なうつ血によつて,門脈血中に内因性ならびに外因性の凝固亢進が認められ, 10分で小腸粘膜毛細血管内にフィブリン沈着が認められDICが発生したことが証明された.フィブリン血栓溶解に最も重要な働きを持つ組織プラスミノーゲンアクチベーター活性は,小腸では主として粘膜下層小血管内皮細胞に一致して高度に認められたが,門脈結紮後,急速に活性の低下が認められ, 20分では消失し非可逆性DICへ移行した.一方,バイパス群ではこれらの変化は認められず, この術式の安全性が凝固線溶学的に証明された.

キーワード
急性門脈遮断, DIC, 組織プラスミノーゲンアクチベーター, 血液凝固線溶系, 親水性ヘパリン化材料


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