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日外会誌. 84(8): 655-666, 1983


原著

ヌードマウス可移植性ヒト固型癌の放射線感受性に関する実験的研究
-細胞動態解析を中心として-

慶応義塾大学 医学部外科教室(指導:阿部令彦教授)

池内 駿之

(昭和57年12月7日受付)

I.内容要旨
ヌードマウス可移植性固型癌を用いて, in vivoにおける放射腺感受性および細胞動態を解析した。
実験にはBALB/cヌードマウス可移植性ヒト癌4株,すなわち肺癌の2株(燕麦細胞癌,低分化扁平上皮癌),舌の高分化扁平上皮癌および食道の中分化扁平上皮癌をそれぞれ1株づつ用いた.
放射線感受性は,Linac X 線1回照射後の腫瘍量の変動および組織学的効果で検討した.細胞動態の解析は3H-thymidineのpulselabeling法により行い,鏡検上で,分裂期細胞中の標識陽性細胞の占める割合(%)を算定しPercent labeled mitosis曲線を得て,細胞周期,DNA合成期,G1期,G2期, Growth fraction,Cell loss factor,標識指数および分裂指数を求めた.
放射線感受性は4株中,肺燕麦細胞癌が最も高く,舌高分化扁平上皮癌,食道中分化扁平上皮癌,肺低分化扁平上皮癌の順に低くなった.扁平上皮癌では高分化型が低分化型より高い感受性を示した. 4株ともヒト体内よりも著るしく放射線抵抗性で,組織所見より宿主側のT-cell欠損による影響と思われた.
細胞動態諸因子は, ヒト体内と異なり,明瞭な2つのピークを有するPercent labeled mitosis曲線より確実に求め得た.扁平上皮癌3株の細胞回転のパターンは類似の傾向で,燕麦細胞癌のそれは短G1期をもち,小さなGrowth fractionを示し, 他と著るしく異なっていた.
扁平上皮癌3株では倍加時間,Growth fraction およびCell loss factorが放射線感受性にわずかに影響を与える傾向がうかがえたが,燕麦細胞癌の高感受性は他の因子が重要なものと思われた.
以上の成績よりスードマウス実験系を用いることによりヒト固型癌のin vivoでの放射線感受性分析が可能であった.

キーワード
ヌードマウス可移植性ヒト癌, 放射線感受性, 細胞動態

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