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日外会誌. 84(7): 638-642, 1983


原著

阻血肢における経皮的酸素分圧値の臨床的意義

山口大学 第1外科

江里 健輔 , 大原 正己 , 中野 秀麿 , 野村 真一 , 倉田 悟 , 森 文樹 , 毛利 平

(昭和57年11月13日受付)

I.内容要旨
下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)23例,28肢,下肢閉塞性血栓性血管炎 (TAO) 10例,10肢,計33例,38肢に対し,治療前に経皮的酸素分圧(tcPO2)を測定し,tcPO2と動脈閉塞部位,臨床症状,手術々式との関係について検討した.対象例を腰部交感神経節切除術,血行再建あるいは薬物療法後に下肢を切断したものと切断を要しなかったものに分けた.下肢切断例は3例, 3肢,下肢非切断例は30例35肢であつた.
前胸部tcPO2の平均値は高齢になるにつれて低値を示す傾向があった.羅患肢足背部tcPO2を前胸部tcPO2で除した値をtcPO2 indexとすると,疾患別,閉塞部位別にはtcPO2 indexの間に統計的有意差は認められなかつた.これに対し,Fontaine重症度分類でtcPO2 indexをみると,II度以上では症状が重篤になるにつれてtcPO2 indexは低下し,IV度のものとII度のものとの間に統計的有意差が認められた.
また,血行再建あるいは腰部交感神経節切除後に下肢切断となったものの治療前tcPO2 indexは0.08±0.04と著しく低く,切断を要さなかつた肢のtcPO2 indexより統計的有意差をもつて低値であつた.このことより,tcPO2 indexは阻血肢に対する手術適応,術式選択決定の指標として有用であつた.

キーワード
ASO, TAO, tcPO2 index, Fontaine重症度分類

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