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日外会誌. 84(7): 577-590, 1983


原著

転移腫瘍増殖に対する手術侵襲および原発巣摘除の影響とCorynebacterium parvumの効果

岡山大学 医学部第一外科学教室(主任:折田薫三教授)

橋本 修

(昭和57年11月6日受付)

I.内容要旨
悪性腫瘍の手術後,その生体内に遺残する腫瘍組織の増殖動態が変化し,多くの場合,増殖あるいは転移の促進という,生体にとつては不利な結果をもたらすことをわれわれはしばしば経験する.そこには手術侵襲による生体の免疫能の変化や,原発巣と転移巣の相互作用など,免疫学的因子,非免疫学的因子の複雑な関与があると考えられる.本実験では転移腫瘍増殖に対する手術侵襲と原発巣摘除の影響,および免疫賦活剤Corynebacterium parvum (Cp) の効果を検討するため,マウスの自然肺転移実験モデルにオートラジオグラフィーを用い,肺転移巣の3H-thymidine標識率を指標として術後の増殖動態を調べた.またその際の宿主の免疫能を遅延型過敏反応と,肺細胞のcytotoxicity(ADCC活性, NK活性)を指標として調べた.その結果,転移腫瘍の増殖に対する手術侵襲そのものの影響は術直後に一過性にみられただけであり,原発巣摘除により,増殖は持続的に増強された.このことは原発巣の存在そのものが主に転移巣の増殖をコントロールしていることを示唆している.一方,原発巣摘除前または後にCpを0.4mg/匹/日, 5日連続腹腔内投与し,特に原発巣摘除前投与群で著明な延命効果と,転移数および増殖の抑制効果を認め,また宿主の免疫能も保持された.以上より,Cpは手術療法と併用すれば,遺残腫瘍の増殖を抑制するのに有効な免疫賦活剤であると思われた.

キーワード
オートラジオグラフィー, Corynebacterium parvum, 遅延型過敏反応


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