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日外会誌. 84(6): 488-499, 1983


原著

MLRおよびCMLからみた腎移植患者の細胞性免疫応答能について

岡山大学 医学部第1外科(主任:折田薫三教授)

関 裕次

(昭和57年10月27日受付)

I.内容要旨
腎移植患者における特異的細胞性免疫応答能の推移をMLR及びCMLを用いて検討した.
1)移植後のMLRは移植前に比較して特異的, 非特異的に著明に抑制されていた.一方,CMLはdonorに対しては特異的に抑制されていたが,controlに対しては移植前と変わらぬCTL誘導能を保持していた.MLRにおける移植後の一様の抑制効果は免疫抑制剤によるものと考えられ,CMLの特異的抑制は何らかの免疫調節が働いているものと考えられた.
2)急性拒絶反応時にはMLRは一様に抑制され臨床所見と強い相関を示した.すなわちMLRとCMLとの間に解離現象が認められ, CTLの誘導には強いMLRは必要ないと考えられた.
3)長期生着例の示すCMLは甚だ興味ある所見を呈した.すなわちcontrolに対するCMLは正常な反応を示すが,donorに対する特異的なCMLは強く抑制され,一見,免疫寛容の状態を示した.
4)この長期生着例におけるCMLの抑制機序をさらに検討したところ,そのsuppressor活性は長期生着患者末梢血の中で,付着細胞分画(マクロファージ)ではなく,T細胞分画,すなわちsuppressor T細胞によつて担われており,そのsuppressor活性にはMHC restrictionの存在することが明らかとなつた.
以上の結果より,移植腎長期生着患者にはdonor specificなCML unresponsivenessが誘導されており, suppressor T細胞がその免疫調節の一端を担つていることが推測された.

キーワード
腎移植, Mixed Lymphocyte Culture Reaction, Cell Mediated Lympholysis, Suppressor T Cell

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