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日外会誌. 84(5): 437-451, 1983


原著

全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術の術後感染症とその予防対策
-骨盤内感染症を中心に-

東京医科歯科大学 第2外科学教室(主任:三島好雄教授)

岡村 孝

(昭和57年10月12日受付)

I.内容要旨
全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術は,大腸腺腫症と潰瘍性大腸炎に対する理想的術式であるが,筋筒内膿瘍を中心とする骨盤内感染症のため,成功率が非常に低かつた.その予防対策として, 1)抗菌剤を使用する術前腸処置とchlorhexidineとcephalothineを使用する術中腸管洗浄法による徹底的な腸内細菌の滅菌処置, 2)筋筒内へのドレーン挿入, 3)一時的な回腸人工肛門造設を,3年8カ月間に,潰瘍性大腸炎11例,大腸腺腫症31例,計42例に行い,本症の診断と治療及び予防対策について臨床的,細苗学的に検討した.
非汚染手術40例のうち骨盤内感染症は10例(25%)に発生し,汚染手術1例では骨盤内感染症と創感染とが発生した.診断には肛門鏡検査が役立ち,回肛吻合部の縫合不全と排膿が認められ,治療は好気性菌と嫌気性菌に有効な抗菌剤による洗浄で,無効のときは切開・排膿術が必要となる. 11例のうち3例は難治性となつたが, 3例では治癒し,回腸人工肛門を閉鎖しえ,残りの4例は治療中であり, 1例は追跡不能である.
術中腸管洗浄法は,大腸粘膜表在の細菌数を減少せしめるのに大変有効であつた.移動回腸内容の細苗数は,回腸人工肛門造設により減少するが,なお骨盤内感染症の一因になり得ることが明らかにされた.
閉鎖式持続吸引ドレーンを直腸筋筒内に挿入するのが予防に有効であるが,誘導結路については結論をうるに到らなかった.基礎疾患,年齢,術者の経験年数は骨盤内感染症の発生頻度と関係なかつたが, J字型の貯留嚢を作製する方が貯留嚢のない方法より,又直腸筋筒の短い方が長い方より頻度は少なく,骨盤内感染症の治療効果と予防効果の向上のためには,直腸筋筒を短かくすることが望ましいと考えた.

キーワード
全結腸切除, 直腸粘膜切除術, 回腸肛門吻合術, 術後感染症, 骨盤内感染症

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