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日外会誌. 84(5): 424-436, 1983


原著

肝切除後の再生に関わる門脈性因子についての実験的研究
-特にアミノ酸の果す役割りについて-

名古屋大学 医学部外科学第二講座(指導:近藤達平教授)

末永 昌宏

(昭和57年9月20日受付)

I.内容要旨
肝切除後の肝再生に関わる因子の検討,および再生を促進する管理法を追求するために, 40%肝切除犬の術後96時間目における3H-thymidineのDNA標識率を指標として,肝再生に影響する門脈血流量や,質的因子としての膵ホルモン,アミノ酸等の役割りを検討した.
1)栄養投与法による差違では,アミノ酸を経門脈的に肝内に投与するとDNA標識率は末梢静脈投与に比較して有意に高値であつたが,経口摂取法に比較すると有意に低値となつた.
2)門脈血の肝内流入を,門脈下大静脈端側吻合(PCA)群と門脈下大静脈交叉吻合(PCT)群で観察し,また経口栄養法とアミノ酸肝内直接栄養法の2つの方法を選び, 40%肝切除のみの対照群と肝再生状態を比較した. PCT群では膵臓血の肝内流入状態を遮断,維持の2群に分けて検討した.その結果,まずPCA群とPCT群の比較から肝内に流入する血液量の重要性が確認された.またPCT群における膵ホルモンが直接肝に流入するか否かによる検討では,膵ホルモンは直接影響を与えるものではないことを知つた.一方門脈血の肝内流入を遮断,変換したものの経口栄養法とアミノ酸栄養法による比較では,後者においてDNA標識率の有意の上昇をみ,アミノ酸が経門脈的に肝に直接流入することの重要性が示唆された.
3)PCT群の肝内流入血を動脈化すると, DNA標識率は肝血流量が増加しているにもかかわらず対照群より有意に低値であつた.
以上より肝再生には,①まず適量の血液の肝内流入が必要であるが,アミノ酸を経門脈的に肝内に投与するとDNA標識率は有意に上昇し,門脈血中のアミノ酸が肝再生に重要な役割りを果すことを示した.②また膵ホルモンおよび門脈血の酸素濃度は,肝再生に直接影響をおよぼす因子とはなり難いことを知つた.

キーワード
肝再生, 肝部分切除, DNA合成, 肝再生の門脈性因子, アミノ酸

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