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日外会誌. 84(4): 310-320, 1983


原著

食道癌患者における術前術後の血管外肺内水分量の変動に関する研究

慶応義塾大学 医学部外科

安藤 暢敏 , 大高 均 , 三吉 博 , 藤崎 真人 , 福田 健文 , 阿部 令彦

(昭和57年8月26日受付)

I.内容要旨
食道癌患者20例を対象として,熱・色素を用いた二重指示薬希釈法により血管外肺内水分量Extravascular lung water (EVLW)を,術前および術後5病日まで測定し,食道癌術後に特異的なwet lungの病態を解析した.
術前EVLWは8.2±2.3ml/kgで,Lewisが著者らと同一の方法で測定した正常値5.7±1.2ml/kgに比べ多い傾向がみられた.
EVLWの術後経日的変動には一定の傾向はみられなかった.対象例とした20例のうち,測定期間を通じEVLWとPWPの変動が類似のパターンを示した症例およびEVLWとPVRの変動が類似したものはそれぞれ1例に過ぎず,従来から用いられている他のパラメーター単独では, EVLWの変動は予知し難い.
各病日間でEVLWが1ml/kg以上増加した症例をEVLW増加群,減少した症例を減少群としてそれぞれの血清膠質浸透圧一肺動脈楔入圧較差(COP-PWP gradient)の変動との関連について検討した.術前から1病日にかけてはEVLW増加群,減少群ともそのCOP-PWP gradientは縮少した. 2→ 3,3→ 4病日ではEVLW増加群のCOP-PWP gradientは9.7±2.5mmHg→7.9±2.6mmHg,7.8±5.4→5.4±7.3mmHgへ縮少する傾向を示し, EVLW減少群では8.9→9.7mmHg,9.4±2.1→12.5±l.6mmHgへ増大する傾向がみられた.とくに3→ 4病日にはEVLW増加群のPWP上昇が顕著で,左心機能の低下傾向が明らかであつた.したがつて食道癌術後wet lungの病態は,3~4病日にはhigh- pressure edemaと同様の機序によりEVLWが増加し,一方1病日までのごく早期にはpermeability edemaと同様の機序が作用したと考えられた.

キーワード
食道癌, 血管外肺内水分量, 二重指示薬希釈法, 術後肺合併症

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