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日外会誌. 84(3): 237-244, 1983


原著

肝胆膵癌手術における門脈切除再建術

浜松医科大学 第2外科

阪口 周吉 , 中村 達 , 飛鋪 修二

(昭和57年7月26日受付)

I.内容要旨
12例の肝胆膵癌手術において,門脈の合併切除再建を行なった.うち5例は膵癌に対する膵全剔と門脈もしくは上腸間膜静脈切除再建であるが, 7例は肝内胆管癌(3例),上部胆管癌(1例),胆嚢癌(3例) に対する右肝3区域切除術と門脈分岐部切除,左枝本幹吻合である.前者は再建が容易であるが,後者は比較的手技が困難で特殊の配慮を必要とする.
門脈の遮断時間は,端々吻合では14~27分の範囲にあるが,分岐部切除ではやや長くなる.上腸間膜動脈同時遮断を行なう.吻合血管径に差を生じる場合が多いので,細い方に切りこみを入れ,太い方に弁を造つて吻合する,いわゆる“さしこみ吻合”を行なうと, 自然なtaperingが得られる.原則的に結節縫合する.門脈分岐部を3cm切除した例では,外腸骨静脈の移植を要した.
この術式による手術切除率は肝内胆管癌46%,上部胆管癌56%,胆嚢癌33%,膵頭部癌53%であった.術後死亡が3例あったが,門脈再建に因するものはなかった.術後に再建部異常による症状を認めたものは1例もなく,早期造影で4例中1例にのみ狭窄を認めた. しかし6カ月以上を経た晩期造影4例のうち生存中の1例を除く3例に癌によると思われる狭窄を認め,その後,概ね短期間で死亡した.耐術例の平均生存期間は約1年であるが,胆悩癌の1例に長期生存を得た.
以上の結果から本術式は直接的には安全なものと考えられるが,術後狭窄の頻度や意義などについては手技・血管移植の必要性などとの関連において更に検討を要する.また,正しい適応のもとに本術式を行なうことは,遠隔予後の向上につながる可能性を持つているが,特に門脈分岐部再建では事前に血管外科的基本手技に習熟しておく必要があると感じた.

キーワード
肝胆膵癌, 門脈合併切除再建, さし込み吻合

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