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日外会誌. 84(2): 161-174, 1983


原著

四肢動脈急性閉塞症の代謝学的研究

岐阜大学 第1外科(指導:稲田潔教授)

加納 宣康

(昭和57年7月19日受付)

I.内容要旨
四肢動脈急性閉塞症に合併する myonephropathic-metabolic syndromeの本態を究明するため,代謝学的観点より実験的ならびに臨床的研究を行ない以下の結果を得た.
I)実験的研究
雑種成犬20頭を用い, ー側後肢を大腿高位で約2/3周離断し,さらに大腿動脈を結紮し,経時的に各種生化学的検査を施行した.
血清電解質ではいずれも有意な変動を認めなかつた.GPTおよびGOTは術後軽度増加し,アルドラーゼは中等度から高度の増加を認めた.CPK分画ではCPK-BBが減少,CPK-MMが増加した.乳酸およびピルビン酸は軽度減少した. ミオグロビンは術後早期に著明に増加したが,48時間後には減少傾向を認めた.アミノ酸分画では, Urea,Tau,I Leu,Leu,Val,Thr,3-Me His, Phe,His,Lys,Met,TyrおよびAnsが増加し,Gln,Ala,Gly,Pro,Car,Citおよび Argは減少した.動静脈較差では,すべての分画で患側静脈血,健側静脈血,健側動脈血の順で較差が大であった.
II)臨床的研究
下肢動脈急性閉塞症8例について各種生化学的検査を施行した.
血清電解質では8例中4例にカリウムの増加を認めた.GPTは8例中2例に,GOTは8例中3例に中等度の増加を認めた.LDHは8例中6例に増加を認め,アイソザイムではいずれもLDH-2の減少を認めた.CPKは8例中4例に高度, 1例に中等度の増加を認め,アルドラーゼは8例中7例で増加を認めた.乳酸は全例で増加を認め, ピルビン酸も7例中5例で増加を認めた. ミオグロビンも7例中6例で増加を認めた. アミノ酸分画では3-Me Hisおよびβ-AIBAが著明な増加を示し,ArgおよびPheが中等度の増加を示した.
以上より,急性動脈閉塞症では各種酸素の変動とともにアミノ酸分画,とくに3-Me Hisの変動が予後の判定に有用と考えられた.

キーワード
急性動脈閉塞症, 酵素, アミノ酸, 3-methylhistidine, ミオグロビン

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