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日外会誌. 84(2): 126-134, 1983


原著

重回帰分析を用いた肝切除の適応判定

兵庫医科大学 第一外科

山中 若樹 , 岡本 英三

(昭和57年7月21日受付)

I.内容要旨
簡便かつ普遍的に利用可能な肝切除の適応判定基準を確立すべく以下の研究を行なった.
1968年から1980年12月末までに当科で経験した肝切除118例中,切除率, ICG負荷試験,肝機能検査,年齢などの計17項目の術前因子を完備した36例を用いて,各種術前因子の予後に対する重みを重回帰分析により判定した.予後は術後の肝機能障害の程度に応じて各々数値化した.さらに各種術前因子のなかから予後を予側するうえに必要な予後因子を変数増減法により選定し,重回帰式を作成した.この結果,(1)各種術前因子の予後に及ぼす重みは,術前因子相互の相関を考慮したうえで切除率,ICG R15,年齢, ICG Rmax,残存予定肝体積(以下略)の順に強かった.(2)予後因子は切除率, ICG R15,年齢,ICG Rmaxの4因子で,予後(Y)を予測する重回帰式は, Y=-110+0.942×切除率(%)+1.39×ICG R15(%)+1.17×年齢+5.94×ICG Rmax (mg/kg/min) である.この重回帰式に36例各々の予後因子の数値を代入して算出した予後(Y)の回帰推定値(予後得点)と各症例の実際の予後とを対比した.肝不全死亡例8例は全例予後得点が50点以上であったのに対し,術後経過良好例の28例は全例予後得点が50点以下であった.
この重回帰式を作成後,新たに1981年1月から1982年2月までに経験した,解剖学的に切除可能症例49例を用いて,術前算出した予後得点と予後を対比した.この結果,肝切除後肝不全死亡例は全例予後得点が50点以上であり,逆に予後得点が50点以下の症例には肝不全死亡例は皆無で, この重回帰式の信頼性が検証された.

キーワード
肝切除, 肝切除の適応判定, 重回帰分析, ICG15分停滞率, ICG最大除去率


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