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日外会誌. 84(2): 119-125, 1983


原著

Cold Blood Cardioplegiaの心筋保護効果

鹿児島大学 医学部第二外科

森下 靖雄 , 丸古 臣苗 , 有川 和宏 , 山下 正文 , 湯田 敏行 , 豊平 均 , 平 明

(昭和57年7月19日受付)

I.内容要旨
われわれは開心術中の至適心筋温を15~20℃と考え, この温度域で残存する心筋代謝に血液を加味したblood cardioplegiaで対処し,臨床上優秀な成績を得ている.そこで,臨床でのblood cardioplegiaの成績を裏づける為に, 15℃前後における心筋の代謝面での血液の有用性を犬の保存心を用いた移植実験で検討し,更にblood cardioplegia後の心機能を実験的に確認した.
1981年8月までのblood cardioplegia使用の手術症例は181例(後天性心疾患120例,先天性心疾患61例)で,そのうち病院死は18例 (9.8%),遠隔死は4例 (2.2%) であった.死因は低心拍出症候群 (LOS) が過半数を占めたが,cardioplegia使用前と比較するとLOS発生率は減少した.
心筋温15℃前後での血液のoxygen carrierとしての有効性を確認するために雑種成犬を用い,ヘマトクリット30%に稀釈した自家血で低圧冠潅流を行ない,15℃の低温下に60分間保存後の摘出心を同所性に移植した.保存後移植20例中16例は体外循環を離脱し,移植犬の固有循環を維持しえて, 15℃前後における保存心での血流の有用性が示唆された.
犬で臨床と同じ条件での体外循環,cardioplegia注入をおこない,blood cardioplegia後の心機能を評価した.90分の血行遮断につづく,大動脈遮断解除後,心拍動を得て体外循環を離脱,その後の30分間の固有循環後の心effort index,,左室dp/dt,cardiac outputはいずれもコントロール値の97~100% と極めて良好な値を示した.
われわれの動物実験成績は心筋温15~20℃の温度域でのヘモグロビンの存在意義を明らかにし, これに従つてのblood cardioplegiaの臨床成績は極めて卓越したものであった.臨床使用での簡便法と共にblood cardioplegiaは推奨されうる方法と考えられる.

キーワード
Cold Blood Cardioplegia, 低圧冠潅流保存, 同所性心臓移植


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