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日外会誌. 84(1): 31-39, 1983


原著

僧帽弁膜症における巨大左房一左室・気管支および肺の圧迫解除を目的とした縫縮手技について

国立循環器病センター 心臓血管外科
*) 国立循環器病センター 内科

川副 浩平 , 高原 善治 , 田中 一彦 , 江郷 洋一 , 林 研二 , 藤井 尚文 , 小坂井 嘉夫 , 小原 邦義 , 鬼頭 義次 , 藤田 毅 , 曲直部 寿夫 , 別府 慎太郎*)

(昭和57年4月13日受付)

I.内容要旨
僧帽弁膜症に伴う巨大左房は,術後にも大きな障害となって残存することが多く,術後の循環・呼吸管理をしばしば困難にしている.著者らは巨大左房に起因する最も重篤な障害を,次の3つの病態に求めた.すなわち,左房の下方への拡大による左室後基部の圧排に基ずく血行動態の障害,左房の左側から上方への拡大による左主気管支の圧迫閉塞に基ずく呼吸障害,および右側左房の拡大による右肺中下葉の圧迫に基ずく呼吸障害である. そして, これらの圧迫を除去する目的で,それぞれの圧迫部位における左房縫縮手技を考案した.
現在までに手術を行なった巨大左房例47例について,左房縫縮術の効果を明らかにするため,術後早期のLOSおよび呼吸障害の発生頻度を検討した.左房縫縮非施行例のLOS発生率が70%であるのに対し, 左室の圧排を除く目的で行なった左房縫縮によつて,LOS発生率が24%に減少した.また,左主気管支と右肺中下葉の圧迫を除く目的で行なった左房縫縮によつて, 71%に認められた呼吸障害がまったくみられなくなった.
以上の結果より,僧帽弁膜症における巨大左房の弊害を,左室,気管支および肺の圧迫障害と促えることの妥当性が示され,著者らの左房縫縮手技の有用性が明らかにされた.

キーワード
巨大左房, 左房縫縮術, 術後LOS, 術後呼吸障害, 僧帽弁膜症

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