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日外会誌. 83(11): 1321-1330, 1982


原著

重症胆管炎の発生機序とその病態

1) 福井医科大学 第1外科
2) 横浜市立大学 第2外科
3) 横浜赤十字病院 外科

嶋田 紘1) , 鬼頭 文彦2) , 阿部 哲夫2) , 新明 紘一郎2) , 小林 衛2) , 土屋 周二2) , 工藤 琢也3) , 森田 修平3)

(昭和57年5月29日受付)

I.内容要旨
ショックに陥るような重症胆管炎の発生機序と病態を明らかにするため,急性胆管炎を臨床的に重症42例と軽症49例に分け検討した.重症例,軽症例のグラム陰性菌々血症の頻度は52.9%,25.0%,エンドトキシン血症の頻度は78.6%,32.6%でエンドトキシン血症の出現がtriggerとなつて重篤化する場合が多いと思われた.重症例の血中検出菌種はKlebsiella又はE.coliが大部分であつた.これらの血中検出菌は胆汁からも検出され,菌血症およびエンドトキシン血症は胆汁由来であることが示唆された.胆道および肝の病態からエンドトキシン血症は,1)良性,悪性の胆管閉塞,胆管内または外瘻の閉塞,胆道内への多量の造影剤の注入,などによる胆管圧の上昇や,PTC,PTC-Drainageなどによる外傷性のcholangio-venous reflux,2)胆管炎または肝膿瘍からの直接的感染,から発生すると考えられた.重症例では白血球数の著増,血小板数,血清CH50,C3,fibronection,肝網内系貪食係数などの著減をみとめ,感染防御能の低下があると思われた.C3と血小板数は両者に有意な相関々係がみられたことよりC3の消費は血小板数の低下すなわちDICの発生に深く関連していることが示唆された.重症例では全例にショックが,76.2%にDICが,52.4%に肺不全が,50.0%に腎不全が,21.4%に肝不全が,21.4%に消化管出血が,4.8%に心不全がみられた.また肝では組織学的に壊死100%(巣状壊死を含む),脂肪変性100%,膿瘍75%,門脈,静脈血栓56.3%がみとめられた.重症例の治療成績は保存的治療のみの死亡率が57.8%,救急胆道ドレナージのそれが56.5%で両者間に差はなく,予後はむしろ合併したDICや臓器不全の程度に左右された.即ち重症胆管炎の治療成績の向上には軽症な胆管炎の時期に適切な早期治療を行いDIC,多臓器障害を含めた重篤化を防止することが重要である.

キーワード
急性閉塞性化膿性胆管炎, 重症胆管炎, エンドトキシン血症, グラム陰性菌々血症, DIC(disseminated intravascular coagulation)


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