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日外会誌. 83(10): 1257-1261, 1982


原著

右内頚動脈起始部及び右椎骨動脈起始部狭窄に対する血行再建の一例

愛知県立尾張病院 外科

池沢 輝男 , 前田 正司 , 中神 一人 , 早川 直和 , 仲田 幸文

(昭和57年5月27日受付)

I.内容要旨
本邦では頭蓋外血管病変による虚血性脳血管障害は,欧米に比して少なく,この病変に対する血行再建術も少ない.特に椎骨動脈病変に対する血行再建術は,はなはだ少ない.
最近我々は,めまいを主訴とする54歳の男性に頚部血管撮影を行い,右内頚動脈及び右椎骨動脈起始部狭窄による虚血性脳血管障害と診断し,各動脈の血行再建術を行い治癒せしめた.本症の成因は動脈硬化によるものがほとんどであるが,一過性脳虚血発作の既往及び症状の他に,頚部鎖骨上窩領域に血管雑音を有する患者に,積極的に頚部血管撮影を行うことにより,より多くの症例が診断されるものと思われる.また血行再建術中は頚動脈を遮断するため,術中の脳保護にはさまざまの配慮がなされてきたが,現在では内シャントの使用が,もつとも一般的である.このシャントの使用の指標として,脳波の術中のmonitoring,carotid artery back pressureの測定,cerebralperfusion pressureの測定が行なわれており,一定の条件下で内シャントが挿入され, 良好な結果を得ている.術後脳塞栓や手術操作の繁雑さのために,シャントの使用をきらう人達もあるが,確実な脳保護を行うためには,内シャントの使用が良策と考える.

キーワード
虚血性脳血管障害, 血行再建術, 内シャント, Carotid artery back pressure


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