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日外会誌. 83(10): 1233-1240, 1982


原著

経皮的酸素分圧測定による下肢血行再建術の評価

鳥取大学 医学部第2外科

応儀 成二 , 伊藤 勝朗 , 岡野 一廣 , 河田 知啓 , 原 宏 , 森 透

(昭和57年4月21日受付)

I.内容要旨
下肢慢性動脈閉塞症における血行再建例において,その手術効果をtcPo2の上昇として捉え,血行再建術の皮膚循環に与える影響を組織酸素分圧の視点から分析し,手術効果の評価法としての有用性を検討した.
研究対象は下肢慢性動脈閉塞症50例とし,このうち血行再建術の適応となつた19例(23肢)を中心に検討した.また対照として健康成人20人(29肢)を用いた.
結果1)前脛骨部tcPo2の上昇は,術後1週目で著しい上昇を示した後,3週目ではわすかな上昇に留つた.2)前脛骨部と足背部では,いずれも術後のtcPo2の著しい上昇を認めたが,閉塞性動脈硬化症では両部位による著しい差異を認めなかつた.3)前脛骨部tcPo2により,閉塞性動脈硬化症とバージャー病との相違を検討したが,両者共に術後の著しいtcPo2の上昇は認めるものの,有意な較差は証明できなかつた.4)術前愁訴消失例はtcPo2の有意な上昇を示し,正常値(健康成人の平均値±SD)に達した.5)間歇性跛行の残存した3例では,tcPo2の十分な上昇が認められず,正常値以下に留つた.6)tcPo2の上昇とFontaineによる阻血肢重症度の改善とはよく相関した.
このように、toPo2の推移から,皮膚循環障害は血行再建後,ほぼ1週間で改善され,3週目には安定すると考えられることから,術後1週以後のtoPo2の低値は,他に末梢循環不全を起こす原因がないかぎり,不完全なrevasculariuationを示唆する根拠となる.また,tcPo2の上昇と阻血症状の回復とはよく相関することより,単に手術効果を客観的に評価できることのみに留らず,歩行開始に先だつて肢の機能をも推定できるので,臨床的意義は大である.

キーワード
経皮的酸素分圧(tcPo2), 皮膚循環, 無侵襲的検査法, 血行再建術


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