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日外会誌. 83(10): 1190-1198, 1982


原著

開心術後の感染
-生体の感染防御機構および栄養状態からみた検討-

名古屋大学 医学部第1外科

早瀬 修平 , 伊佐治 文朗 , 堀田 明男 , 矢野 洋 , 渡辺 孝 , 竹内 栄二 , 野垣 英逸 , 鷲津 卓爾 , 村瀬 允也 , 田中 稔 , 清水 健 , 阿部 稔雄 , 弥政 洋太郎

(昭和57年4月21日受付)

I.内容要旨
1974年1月から1981年7月まで名古屋大学医学部第一外科で施行された体外循環下開心術症例381例を対象として,細菌感染,輸血後肝炎(血清肝炎共同研究班の基準),そして原因不明の発熱(第10病日をこえて発熱のあるもの)に関して検討した.術前の栄養状態,感染防御能を反映する各種指標(N.Y.H.A.分類,身長体重比,総蛋白,アルブミン,A/G比,免疫グロブリン,補体,白血球数,赤血球数,リンパ球数,Prognostic Nutritional Index(P.N.I.)と感染との関係を比較検討した.さらに体外循環の感染防御能に及ぼす影響と感染との関係についても検討した.
細菌感染は12.6%,輸血後肝炎は17.6%,発黄は8.4%,そして原因不明の発熱は28.6%に発生した.細菌感染の起炎菌はグラム陰性桿菌が全体の約74%を占めた.大腸菌は2例に検出されたにすぎない.
最近注目されている緑膿菌以外のブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌は26.2%を占めた.またグラム陽性菌の半数以上がStaphylococcus epidermidisであつた.このように菌交代現象の結果とし,あるいは生体の感染防御能が低下した結果として起炎菌となるいわゆるopportunistic pathogenによる感染が多発している.
術前の栄養状態および感染防御能の指標のなかで,感染率との有意の相関が認められたのはN.Y.H.A.分類のみであつた.P.N.I.は症例が少なく有意な相関を認めなかつたが,P.N.I.が大きくなるほど感染率が高くなる傾向がみられ,N.Y.H.A.分類とともに術後感染率を予測するのに良い指標と考えられた.
体外循環時間の延長とともに感染率は有意に高くなり,体外循環による感染防御能低下の様相と良く相関した.膜型人工肺の使用によつて感染率の有意の低下を得ることはできなかつたが,体外循環3時間以上では膜型群の細菌感染率の方が低い傾向にあつた.

キーワード
開心術後の感染, 感染防御機構, 栄養状態, Opportunistic pathogen, Prognostic Nutritional Index

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